2007年08月30日

ケイト・ブッシュ:Cloudbusting

Cloudbusting クラウドバスティングCloudbusting)――この曲は『Hounds of Love』のアルバムに収録されているのだが、ワシ自身は12インチシングルの印象の方が強く、また12インチシングルよりもビデオクリップの印象の方が強い。そこにクラウドバスターが登場したからだろう。

クラウドバスター雲退治機)。オルゴン・エネルギーを発見したウィルヘルム・ライヒの発明である。クラウドバスターを使えば、空中のオルゴン放射線を地上に降ろすことができて、いつでも思いのままに雲を消したり、雨を降らせたりすることができるという。ここでしばし、ライヒとオルゴンについてひもといてみよう。

Cloudbuster オルゴンは“宇宙の根源エネルギー”の一種で、1930年代にウィルヘルム・ライヒによって発見されたとされている。フロイトに師事し、精神分析医となったライヒは、「性的衝動が生物学的エネルギーに起因するものなら、電気と同じように測定ができるのではないか」という考えを持つようになる。ライヒはこれを「オルゴン・エネルギー(生物学的エネルギー)」と名づけたが、このオルゴン・エネルギーは世界にあまねく存在し、空の色も、政治革命の多くが失敗したのも、良きオルガスムスを得るのにも、オルゴン・エネルギーが関係していると主張した。

その後ライヒは、オルゴノン研究所を設立し、オルゴン・エネルギーの小胞である生物エーテル・バイオンの発見、オルゴン・アキュムレーター(オルゴン蓄積器)やクラウドバスターの発明と、研究を進めていく。しかし、FDA(米国食品医薬品局)はこれに圧力を加え、オルゴン・アキュムレーターの販売・貸与を禁止、関連書籍を焼却した。この決定について法廷で争ったライヒは、逆に法廷侮辱罪を宣告される。その後、オルゴン・アキュムレーター貸与の理由で、ライヒは投獄。1957年11月3日、ペンシルバニア州ルイズバーグの連邦刑務所で死亡する。

クラウドバスターとそのメカニズムについて、『オルゴン生命体の謎』(アンドルー・コリンズ著、徳間書店)から引用してみよう。

・・・クラウドバスター(気象制御装置)を空の一部に向け、オルゴン・エネルギーのポテンシャル(OP)をコントロールすることにより、雲を創生し雨を降らせたり、さらに破壊し消滅させたりできるという。トラックに積まれ移動可能なクラウドバスターの基本形は、中空の鉄パイプとオルゴン・アキュムレーターとで構成されている。

 これは回転盤の上に一群の中空金属パイプを載せたもので、現在ではリモートコントロールで方向を自由自在に変える事ができるタイプもある。鉄パイプはケーブルで接続され、一度アキュムレーターを通過したあと、流水に浸される。

 ライヒによると、金属パイプは雲の中から、不活性オルゴンであるDOR(致死性オルゴン放射線)を引き出す効果があり、さらに流水がパイプからDORを引き出し中和させるという。電気でいうとパイプはちょうど避雷針のようなものであり、水はアースの役目を果たしているとも考えられる。

 塵やほこりが静電気を帯び、陽イオンの空気分子群となっていた場合、流水によってパイプには負の圧力(陰圧)が生じ、鉄パイプの先端から空気を引き込もうとする流れが生じる。

 先端の鉄パイプで電気的に中和される際にほこりが吸着され、新鮮な空気が流水に供給される。穏やかな変化ではあるが、大気汚染が除去され、空気が浄化されるという。

 このプロセスは、ライヒによって「宇宙オルゴン放射操作」と名付けられている。(P.210)

オルゴンの実態については、ライヒの死とともにうやむやにされてしまう。果たして父が研究していたオルゴンとは何だったのか・・・――ウィルヘルム・ライヒの一人息子であるピーター・ライヒのそんな思いがつづられた本が『A Book Of Dreams』だ。ライヒ博士が亡くなったとき、ピーターは13歳だったのだ。

ケイト・ブッシュは、ピーター・ライヒの本を忠実になぞっていく。自分が息子ピーターになって、父ウィルヘルム・ライヒを追いかける。名優ドナルド・サザーランドがウィルヘルム・ライヒに扮したことで、ケイトが「ファンタスティックだった」と言うように、ビデオクリップの質は格段に高まる。またケイトの熱演もあって、短編映画風のビデオクリップは、かなりの出来栄えを示している。

そこに登場するオルゴノン研究所、不思議なライヒ博士の実験、そしてクラウドバスター。興味を持たない方がおかしいと思えるほどの映像が、そこには展開しているのだ。

  今でも“オルゴノン”の夢を見て
  泣きながら目を覚ます
  あなたが雨を降らすのね
  手を伸ばせばあなたに届きそうなのに
  あなたと眠りは私から逃げていく・・・

 Kate Bush:Cloudbusting
 Kate Bush:Sat in Your Lap
 Kate Bush:Suspended in Gaffa
 Kate Bush:The Red Shoes (Extended)
 Kate Bush:Wuthering Height

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ケイト・ブッシュ ※画像をクリック
ケイト・ブッシュ / 愛のかたち
ケイト・ブッシュ・ストーリー
ケイト・ブッシュ / レッド・シューズ
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2007年08月27日

ピーター・ガブリエル:Red Rain

So もう20年が経つ。20年前の1987年6月27日、ワシはロンドンにいた。そして向かった先はアールズ・コート。ピーター・ガブリエルの“Soツアーだ。

ワシの大好きなガブリエルW「Security」。それから4年後に「So」は発表された。「So」は、どうしようもない居心地の悪さを感じさせるものだった。ガブリエルの病的神経症的なところを好んでいたワシは、「So」のわかりやすさに戸惑っていた。もちろん「So」のアルバムが悪いわけではない。一つ一つの曲が悪いわけではない。しかし居心地の悪さは否定できなかった。その中で救われた曲が「レッド・レイン」だ。

ガブリエルの言う「赤い雨」とは血のこと。それが身体にまとわりついて離れない。人間が本来持っている抑制された感情のことを歌った情念のバラードが、この「レッド・レイン」だ。

『ピーター・ガブリエル正伝』で、ガブリエルはこの曲についてこう語る。

 何年も前、いまだに忘れられない夢を見たんだ。ぼくは赤と黒のうねるような海を泳いでいて、急に海がものすごい勢いで荒れだした。すると海は二つの白い壁に分かれたんだ。一つの壁からもう一つの壁へと瓶か、はたまた人間の格好をしたものが数珠つなぎになって、赤い水を運び、やがてそれは落ちてもう一つの壁の底で粉々にくだけ散るんだ。ぼくはこれをあるストーリーの中のワン・シーンに使ったんだけど、赤い海と赤い雨は否定された感情や思考を表わしているんだ・・・

 感情や苦しさは表に出してやらないと、どんどん悪くなったりふくれあがったりするだけじゃなくて、外の世界にひとりでに出たりするんだと思う、人生では人との関係においてとか。たとえば、この場合には心の嵐を表に出さないと、どしゃ降りの雨になって現われてくるんだ。

早めに着いたワシは、会場をぶらぶらと歩いていた。1階にはWOMADの展示があり、音楽が流れていた。そして、前座のユッスー・ンドゥールのステージが終わると、いよいよ御大の登場。すごい人気だ。

1曲目は「サン・ジャシント」。ワシの大好きな曲なので、いきなり興奮してしまった。その興奮さめやらぬ間に始まった2曲目が「レッド・レイン」だった。ブラジルのあるリズムを元にしたというこの曲は、デヴィッド・ローズのがちがちなギターとトニー・レヴィンのぶっといベースに乗っていく。

  赤い雨が降ってくる
  真っ赤な雨
  赤い雨がどしゃ降りになって
  僕の体中に降り注ぐ

  赤い雨
  重圧はますます重くのしかかる
  そのたびに元の場所に立ち返るには
  赤い雨に打たれることだ
  その肌に赤い雨を受けることだ
  君のもとへ行くよ――防御を解いて
  幼子のように信じきっておくれ

 Peter Gabriel:Red Rain
 Peter Gabriel:Sledgehammer
 Peter Gabriel:In Your Eyes
 Peter Gabriel & Kate Bush:Don't Give Up

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ピーター・ガブリエル ※画像をクリック
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / SO
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / 4: Security
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / Plays Live ダウンロード
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2007年08月24日

スレイド:Run Runaway

Get Yer Boots On: The Best of Slade その昔、ポップス・イン・ピクチャーという番組があった。略してPIPと言っていた。司会は川村尚だったようだが覚えていない。確か、東京12チャンネルで平日の夕方に放送していたように記憶している。当時はビデオなんてないから、PIPがあるときは必死に帰ってきて見たものだ。とにかく洋楽ビデオが見られる番組は、あとNHKの「ヤング・ミュージック・ショー」があるくらいで、ホント貴重だったのだ。

たまに友達とフィルム・コンサートにも行った。そのころは必ずベイ・シティ・ローラーズとクイーンが出てきて、女の子のきゃーきゃー言う声が飛ぶ。「お前ら、スクリーンに向かって、きゃーきゃー言うなよな・・・」と思いながらも、多勢に無勢、肩身の狭い思いをして友達と見ていたものだ・・(笑)。そしてFMでは、渋谷陽一の「ヤングジョッキー」が欠かせなかった。しかし考えてみると、この時代って恥ずかしげもなく、みんな「ヤング」だな(笑)。「ヤングおー!おー!」とかね。。。

Slade そのPIPで知ったのがスレイドだった。スレイドはグラム・ロックと言われていたが、そんなジャンルはどうでもよく、ストレートな質のいいロックをするという印象だった。何と言っても、強烈なのはそのルックスだ。ボーカルは山高帽にタータンチェックのノディ・ホルダー。ダミ声の変なおじさんって風情。ギターのデイヴ・ヒルは、ギャグとしか言いようのない顔だけくり抜いたヅラ風長髪にギンギンのブーツ。ベースとドラムはまるで印象なし(笑

あまり覚えていないが、そのとき「Cum on Feel the Noize」や「Gudbuy t'Jane」なんかを聴いたような気がする。また“スレイド語”とも言われる、労働者階級にも読めるようにしたというスペリングも印象的だった。「I Luv You」とか、「Wot You Dun」とか、「Pleeze Me」とか、なぜか「なるほど!」と納得していた(笑

それからかれこれ10年ほど経ってから、スレイドを見たのは「ベストヒットUSA」か「MTV」だった。それが「Run Runaway」。

 ♪「Run Runaway」を聴いてみる。

「スレイドか・・・懐かしいな」と思いながら見ていたのだが、この曲のノリ、スコットランドしたビデオに魅せられた。メンバーは年取った感じがしたが、ノディ・ホルダーのおっさんぶりはますます快調(笑)。子供たちや鼓笛隊もいい。それにしても、あの丸太ん棒かかえたおっさんは何なんだろう?

妙に感傷的にもなってしまうが、スレイドと言えばこんな感じ。そして、懐かしいあのころにRun Runaway・・・

 Slade:Cum On Feel The Noize
 Slade:My Oh My
 Slade:Run Runaway

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スレイド ※画像をクリック
スレイド Slade / Get Yer Boots On: The Best Of Slade
スレイド Slade / The Amazing Kamikaze Syndrome ダウンロード
スレイド Slade / Feel The Noize: Greatest Hits ダウンロード
posted by 上村龍司 at 17:23| Comment(0) | TrackBack(0) | ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月22日

U2:ストラトの系譜

WAR New Wave #5.U2 : WAR

ニューウェイヴがストラトというイメージができたのは、いつからだろう。まず思い出すのは、U2エッジだ。エッジのカッティングやディレイはカッコよかったし、これこそニューウェイヴのギターだと思ったものだ。

U2のアルバムと言えば、やはり「WAR」だろう。最初から最後までたるむことのない、このアルバムの完成度は非常に高く、ワシの中では「Boy」や「October」の印象を吹っ飛ばしてしまっている。「WAR」について、ボノは「『WAR』とはいろんなレベルにある『戦い』を扱ったものなんだ。・・・確かに『戦い』がテーマだ。それも、何かを壊して新しいものを築いていくためのもの。決して否定的なアルバムなんかじゃないんだよ」と言い、その重いテーマを歌うのだが、BGM的に聞き流していたワシには歌詞がよくわかっていない。それでも「WAR」の音には魅せられた。

エッジのストラトが印象深いのは、ひょっとしたら「New Year's Day」のビデオクリップなのかもしれない。雪の中での演奏に、戦闘シーンがかぶる。乗馬シーンにピアノが鳴る。うは、寒そう・・・と思いつつ見ているが(でもワシはこの寒い中での演奏シーンって、やたらと好きなんだな。うん)、ボノの力強いボーカルもあって妙に惹かれた。そこに奏でられるエッジの印象深いギタープレイが心地よい。やはり「New Year's Day」は絶品だ。

U2の「WAR」は83年なので、その前にストラトのイメージはなかったのかと考えると、やはり出てくるのはエイドリアン・ブリューだ。

エイドリアン・ブリューを知ったのは、トーキング・ヘッズのときだったが、やはり大事件だったのは新生キング・クリムゾンだ。エイドリアンの加入で、クリムゾンがヘッズ化したと言われたりもするが、いつもアグレッシブで、プログレッシブを求めるロバート・フィリップの嗅覚と度量の広さに、ワシは感心する。この「Elephant Talk」のライブでのロバート・フィリップの笑顔を見ると、まさに彼の計算どおりにエイドリアンがはまったという感じだ。

それにしても「Discipline」でのエイドリアンのギターには、度胆を抜かれた。え゛、これゾウかよ・・・。ソロアルバム「ローン・ライノウ」では、ネコとサイ。動物の鳴き声は、ダイキンのCM()で、その後お茶の間でも有名になるが、当時はびっくりしたものだ。まあ、ゾウに限らず、他の曲においても、エイドリアンの独創的・変幻自在のギターはホントすごい。まさにキング・クリムゾンの復活だった。

思い起こしてみると、エイドリアン・ブリューとエッジが、ワシのニューウェイヴのギターのイメージなのだった。・・・おっと、アンディ・ギルを忘れてはいけない。

 U2:New Year's Day
 U2:Sunday Bloody Sunday (Live Red Rocks)
 King Crimson:Elephant Talk
 King Crimson:Thela Hun Ginjeet
 Adrian Belew:ダイキンCM 1
 Adrian Belew:ダイキンCM 2
 Adrian Belew:ダイキンCM 3

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エッジ & エイドリアン・ブリュー ※画像をクリック
U2 / WAR(闘)
U2 / U218 Singles
キング・クリムゾン King Crimson / Discipline
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2007年08月20日

スティーブ・ハケット:Sentimental Institution

Defectorスティーブ・ハケットの新譜買ったの? どうだった?」
「うん、なかなか。最後まで聴けばわかるよ」

そう言って、友達はスティーブ・ハケットの「Defector」のアルバムに針を落とした。僕は、スティーブ・ハケットの前作「Spectral Mornings」が気に入っていた。特に、そのアルバムのタイトル曲である「虹色の朝」の透明感が素晴らしく、この「Defector」でもそうした曲を期待していたのだ。

アルバム自体は決して悪くはなかった。5拍子や7拍子の曲があったり、B面になってハケット節が出てきたりしてスティーブ・ハケットらしさは十分なのだが、残念ながら「虹色の朝」にあった透明感は出てこなかった。「スティーブ・ハケットは、エドワード・ヴァン・ヘイレンより先にライトハンド奏法をやってたんだよね」とか、関係ないことをいろいろ考えたりもする。そして最後の曲、「Sentimental Institution」・・・え。

 ♪「Sentimental Institution」を聴いてみる。

「これか・・・いいねぇ」
「そうだろ。はまるなぁ」

よく考えてみると、この1曲だけが異質なのだが、気分は1920年代のアメリカ、ウィスコンシンって感じだ。こうしてセンチメンタルな夜は更けていくのだった。

 Steve Hackett:Ace of Wands
 Steve Hackett:Shadow Of The Hierophant 〜 Clocks
 Steve Hackett:Jacuzzi
 Steve Hackett:The Steppes

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スティーブ・ハケット ※画像をクリック
Steve Hackett:VOYAGE OF THE ACOLYTE ダウンロード
Steve Hackett:SPECTRAL MORNINGS ダウンロード
Steve Hackett:DEFECTOR ダウンロード
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2007年08月17日

ポリス:ニューウェイヴの牽引者

Reggatta de Blanc New Wave #4.The Police : Reggatta de Blanc

パンクとニューウェイヴの最大の違いは、その演奏力だろう。演奏力の違いを見せつけたバンドとして、ワシはポリスを思い浮かべる。パンクを指向した彼らが演奏力をひけらかすことはなかったが、桃李もの言わざれども・・・演奏力の高さはだれが聴いても自然とわかってしまうのだ。

ジャズロック風味のスティングのベースとボーカル、元カーヴド・エアーのスチュワート・コープランドのエキサイティングなドラム、元ニューアニマルズ、ソフト・マシーンのアンディ・サマーズのマルチなギタープレイ。この3人が織りなすレゲエパンクは、正直言ってカッコよかった。80年前後は、ポリスを聴いていることがまず前提みたいなところもあった。ジミヘンクリームのように、3人が責任と緊張感の中で鎬(しのぎ)を削るギタートリオ――コープランドが提示したこの戦略が、3人の才能をうまく引き出したと言えるのかもしれない。

ポリスの洗練された演奏が、パンクではない、パンクを利用したなどと言われたりもするが、78年のファースト『Outlandos d'Amour』で、「ロクサーヌ」が売春婦の名をタイトルにしたことで放送禁止、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」が自殺をテーマにしているということで放送禁止となっていることなどを考えると、十分にパンク性を持っていたことは明らかだ。そして、パンクにとどまらず、パンクを軽いステップで踏み越え、ニューウェイヴの中心的存在となっていくのが、ポリスのポテンシャルなのだろう。ちなみに、この2曲はビデオにリンクさせといたが・・・今見ると、その安直な作り方と3人のはしゃぎ方は、おいベース弾けよ、シンバル合ってねえよ・・・って笑える^^。

この79年のセカンド『Reggatta De Blanc(白いレガッタ)』は、“ロックンロールの馬力にうねるようなレゲエの持ち味を切れ目なく溶接するハイブリッド音楽の創造”というポリスのコンセプトが明確に打ち出されている。タイトルの「Reggatta」は、「regatta(レガッタ)」を「reggae(レゲエ)」っぽくしたものだと思うが、そこからも彼らのスタンスは明らかだ。しかし改めて聴くと、ホワイト・レゲエの曲が思ったより少ないことに驚かされる。「ポリスはレゲエ」という観念がいつの間にか肥大化していたようだ。

だからと言って、それがこのアルバムの価値を引き下げるものではない。「孤独のメッセージ」で始まるこのアルバムのグルーヴ感は、心地よく聴き手を揺さぶる。コープランドのオカズの多い切れのいいドラムに、サマーズの多彩なギター、スティングの力強いベースとハイトーン・ボーカルがかぶる。このセカンドとサードの『Zenyatta Mondatta』を90分テープに録音し、懐かしのウォークマン初号機に入れて、よく街中を歩いたものだ。ビデオクリップを見ているかのように、街はポリスのノリに染められていった。まさに快感!だ。

その後ポリスは、81年の『Ghost in the Machine』で音をいろいろと広げていくが、このアルバムのシンセの音は正直好きになれなかった。しかし「Every Little Thing She Does Is Magic」が個人的に大好きなのでよしとしよう。またこの「Ghost in the Machine」というタイトルは、アーサー・ケストラーの『機械の中の幽霊(The Ghost in the Machine)』から来たのだろうが、同様にこの本から『攻殻機動隊(The Ghost in the Shell)』が出ていることを考えると、いとをかし(笑)。そして83年には名作『Synchronicity』を発表。これだけクオリティの高いアルバムを5作続けて出した力量は、ホント大したものだと思う。

78年から83年という短期間だったが、ポリスの衝撃は深く刻み込まれた。まさにポリスは、ポスト・パンクの時代を駆け抜けるニューウェイヴの牽引者であった。

 The Police:Roxanne
 The Police:Can't Stand Losing You
 The Police:Message In A Bottle
 The Police:Don't Stand So Close To Me
 The Police:Every Little Thing She Does Is Magic
 The Police:Every Breath You Take

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ポリス ※画像をクリック
ポリス Police / Outlandos D'amour
ポリス Police / Reggatta De Blanc
ポリス Police / Synchronicity
posted by 上村龍司 at 12:14| Comment(0) | TrackBack(1) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月15日

パブリック・イメージ・リミテッド:ニューウェイヴの雄

Second Edition New Wave #3.Public Image Ltd. : Metal Box

ロックは死んだ

ジョン・ライドンのこの言葉からニューウェイヴの門は開かれた。作られたパンクの虚像をぶっ飛ばし、商業主義に陥り形骸化したロックを葬り去ったジョン・ライドンが行き着いたところは、ニューウェイヴというロックの流れだった。ジョン・ライドンは、またしても制度化の迷宮に絡め取られることになる。

先を急ぐことなく、このメタル・ボックスを見るならば、そのアグレッシブな姿勢は評価されていい。先鋭的なパブリック・イメージの音は、まるでロックの墓碑銘を明らかにするように、我々の観念を切り裂いていく。・・・などとシリアスなノリで今回は始めてしまったが、それもジョン・ライドンに対する思い入れの強さなのか(笑

ワシがパブリック・イメージを聴いたのは、ファーストではなく、このセカンドが最初だった。これはワシのよくあるパターンで、流行を先取りするってことができず、いつも反応が鈍いがゆえにこうなってしまうんで、別に意図しているわけではない。このメタル・ボックスにはホント驚かされた。セックス・ピストルズのイメージしかなかったワシは、「え?え?ジョニー・ロットン?なに?」って感じだった。でもこのあたりのインパクトは、当時のリアルタイムでないとないのかもしれないとも思う。・・・あ、そうそう、当時ワシらは「PiL(ピル)」と呼ぶのはイモだし、「パブリック・イメージ・リミテッド」と呼ぶのは長すぎるので、「パブリック・イメージ」と呼んでいた。ここではその言い方を踏襲するので、よろしくね。

最初インパクトを与えたのは、ジャー・ウーブルの重いベースだった。その重い音色はロックを解体して、その破片を深い水の底に沈めていくようにも思えた。そこに、キース・レヴィンの神経質でフリーキーなギターと、マーティン・アトキンスの無機質なドラムがかぶるわけだが、何と言ってもジョン・ライドンだ。ジョン・ライドンのボーカルは、アジテーションのごとく、ラディカルな魂の叫びを発し、ロック・スターをずたずたに切り裂いていく。その歌詞においても、かつて「だまされた気分はどうだい」と言い放った、ジョン・ライドンのシニカルさは健在だ。まさに、イギリスならではのニューウェイヴのクールを体現していた。

Metalbox メタル・ボックスを聴いたあと、ファーストを聴いた。まだパンクを引きずっている嫌いのあるファーストと異なり、メタル・ボックスでは音の方向性がはっきりとしていることがわかった。こうした音の自信が、「できるだけいい音質で提供する」というメタル缶のコンセプトのつながっていくのだろう。そのころ、高価だったそのメタル缶を見上げては、「欲しいなぁ」と指をくわえて、よだれを垂らしていたワシを思い出す・・・って子供かワシは(笑

このあと、パブリック・イメージは「The Flowers of Romance」というすさまじい衝撃を残すことになるが、それについては稿を改めよう。

 Public Image Ltd.:Public Image
 Public Image Ltd.:Poptones
 Public Image Ltd.:Careering
 Public Image Ltd.:Memories

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Public Image Ltd. ※画像をクリック
Public Image Limited:METAL BOX ダウンロード
Public Image Limited:FLOWERS OF ROMANCE ダウンロード
Public Image Limited:LIVE IN TOKYO ダウンロード
posted by 上村龍司 at 12:08| Comment(0) | TrackBack(0) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月12日

プログレ5大バンドの「この1曲」!

In the Court of the Crimson King ひょっとしてこのバンドのこの1曲っていうのが選べるんではないかと思った。例えば、レッド・ツェッペリンの場合、「ベスト・アルバムは?」って言った場合、ワシは『フィジカル・グラフィティ』を挙げるのだが、「いや、Uだ。Wだ。聖なる館だ。プレゼンスだ・・・」などと議論百出の様相を呈するわけだが、「ツェッペリンの1曲は?」って言ったら、これは「天国への階段」で全員一致ってもんだ・・・しゃんしゃんしゃん????????

そこで、プログレ5大バンドで「この1曲」を考えてみることにした。プログレ5大バンドとは、ご存じのように、キング・クリムゾンピンク・フロイドイエスエマーソン・レイク&パーマージェネシスである。すると、次のようになった。

これはすんなりと挙げられたし、まあ異論のないところだろう。どれも長い曲なので、1曲の時間も記してみた。「Close to the Edge」の時間については、いろんなデータがあったが、これはおそらく小鳥の声をどこで区切るかっていう問題だろう(笑

ところでキング・クリムゾンは?ってとき、はたと戸惑ってしまった。え゛何だろう・・・「エピタフ」、「人々の嘆き」、「スターレス」、いや「クリムゾン・キングの宮殿」「太陽と戦慄パートU」もあるし、ワシが好きな「偉大なる詐欺師」や「セラ・ハン・ジンジート」は「この1曲」って感じではないし・・・なんて考えて、結局選んだのは次の曲。

ここは異論があるかもしれないが、でもやはりこの曲のような気がする。てなことで、トップには『クリムゾン・キングの宮殿』を。ちなみに、このアルバムが「ビートルズの『アビイ・ロード』をチャート1位から蹴落とした」っていうのは、イギリスのローカル・チャートでの話らしい。

 King Crimson:21st Century Schizoid Man(Hyde Park 1969)
 Pink Floyd:Echoes 1(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 2(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 3(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 4(Live at Pompeii)
 Yes:Close to the Edge 1
 Yes:Close to the Edge 2
 ELP:Karn Evil 9 1st impression part 2(California Jam 1974)
 ELP:Karn Evil 9 3rd impression(California Jam 1974)
 Genesis:Supper's Ready 1973 1
 Genesis:Supper's Ready 1973 2
 Genesis:Supper's Ready 1973 3

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プログレ名盤 ※画像をクリック
キング・クリムゾン King Crimson / In The Court Of The Crimson King
ピンク・フロイド Pink Floyd / Meddle
イエス Yes / Close To The Edge
posted by 上村龍司 at 12:29| Comment(0) | TrackBack(0) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月09日

トーキング・ヘッズ:ニューウェイヴの源流

Remain in Light New Wave #2.Talking Heads : Remain in Light

トーキング・ヘッズを聴いたのはいつのことだったか。今野の雄ちゃんがしきりに「ヘッズ、ヘッズ」と絶賛していたことを思い出す。ひねくれ者のワシは、あまり絶賛されると聴く気が失せてくるので、なんだかんだと後回しにしてしまった。結局聴いたのは、トムトム・クラブと一緒だったから、81年のことになる。そのとき、「何ですぐにヘッズを聴かなかったんだろう」と悔やんだものだが、まあこのへんはワシの性格ということでどうにもならんのだな・・・?????[???i???j

ニューウェイヴを語る上で、絶対に外せないのが、この「Remain in Light」だと思う。まあこれは、ワシが声高に言わなくても、だれしもが認めるところだろう。ニューウェイヴとは何かというと、パンク・ロックのあとのロック・ムーブメントくらいの漠然としたものだと思うが、そのリズムには特徴があった。レゲエ、スカビート、リズムマシーンの導入など、“リズム革命”とでも言えるものがそこにはあった。ヘッズの場合は、アフロビート中心に取り入れたわけだが、当時その試みには驚かされた。普通「ロックとの融合」とか言って下手なことをすると空回りして失速するものだが、ヘッズの場合すごいノリで迫ってきたのだ。

この「Remain in Light」は今聴いてもその新鮮さに驚かされる。それは、デヴィッド・バーンをはじめとするティナ、クリス、ジェリーの4人の力量はもちろんだが、エイドリアン・ブリューのギター、ブライアン・イーノのプロデュースが結晶してできたからだろう。

Tom Tom Club またティナとクリスのトムトム・クラブがいかしてた。明るいノリで、ラップ、エスニック。「Tom Tom Club」の存在感は今も残っている。「おしゃべり魔女」のらっさんさん、らっさんさん、くにくにくにくに、あっさんさん????????・・・はホントに聴いてるだけでほほ笑ましいのだ。ヽ(´ー`)ノ

極めつけは、映画「Stop Making Sense」だろう。何にもないステージにデヴィッド・バーンがラジカセを持って一人で出てきて「Psycho Killler」。ラジカセにけっつまずかないかなと見ていると、次はティナが出てきて、黒子然としたスタッフがステージを組み立て始める。クリス、ジェリーと出てきて、サポート・メンバーが勢ぞろいするころには、ステージも万全。バーンはくねくねダンスやライトスタンドのアクションなどしながら、「Once In A Lifetime」では痙攣ダンス。「Girlfriend Is Better」のだぼだぼスーツ、トムトム・クラブのティナの土着ダンスと、パフォーマンスも盛りだくさん。ライブのノリもあわせて、まさにヘッズの存在感を見せつけたという感じだ。またこの映画はカメラワーク・ライティング・編集のうまさも特筆すべきだろう。

「正気でいようとするなよ!(Stop Making Sense)」と言うセンスの良さ、ロックとアフロビートの融合、そしてそのノリのすごさ、ちょっと変人的パフォーマンス(笑)・・・トーキング・ヘッズはニューウェイヴの源流とも言える存在感なのだ。

 Talking Heads:Psycho Killler
 Talking Heads:Once In A Lifetime
 Talking Heads:Girlfriend Is Better
 Tom Tom Club:Wordy Rappinghood
 Tom Tom Club:Genius of Love

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トーキング・ヘッズ関連 ※画像をクリック
トーキング・ヘッズ Talking Heads / Remain In Light (DualDisc)
トム・トム・クラブ Tom Tom Club
ト−キング・ヘッズ/ストップ・メイキング・センス<完全版>
posted by 上村龍司 at 12:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月06日

ピーター・ガブリエルV:ゲートエコーの衝撃

Peter Gabriel 3: Melt New Wave #1.Peter Gabriel VMelt

「ド、ド、タ、ド、ド、タッ! ド、ド、タ、ド、ド、タッ!・・・」

そのアルバムは衝撃的な音から始まった。ピーター・ガブリエルのサードアルバム、最初の曲「Intruder」のゲートエコーの音には驚かされた。・・・な、なんだ、このスネアの音は!って感じだった。

こんな音マネでは、あまりにもしょぼいので、「Intruder」のイントロをアップしてみる。

 ♪「Intruder」を聴いてみる。

ピーター・ガブリエルというと、いろいろと思い入れがあるわけだが、そうしたことを抜きにしても、このゲートエコーの音はすごかった。このアルバムが発表されたのは80年。「できるだけいい音質を提供する」といったコンセプトで、レコードをメタル缶に入れた、パブリック・イメージの「メタル・ボックス」が発売されたのが同時期なので、これは録音技術が格段に進化した年と考えて間違いない。

ところで、そのゲートエコーだが、ワシはてっきりガブリエルVのプロデューサーであるスティーブ・リリーホワイトが作ったとばかり思っていたのだが、調べてみると、作ったのはエンジニアのヒュー・パジャムフィル・コリンズ、それを一般化したのがスティーブ・リリーホワイトということだ。でもこうした音を求めていたピーター・ガブリエルなしには成り立たなかったわけで、やはりガブリエルなしにはゲートエコーはあり得なかったと思う。そもそもVでは、リズムから曲を作るスタイルをはじめ、シンバルとハイハットを取っ払ったり、ドラム・マシーンやフェアライト・シンセを導入したり、アフロ・リズムをやったりといった“リズム革命”が試行されていて、ゲートエコーはそこにぴったりはまったという感じなのだろう。ちなみに、この「ゲートエコー」は「ゲート・リバーブ(Gated reverb)」という言い方もあるが、その当時は「ゲートエコー」って言われていたので、その方がワシ的にはぴったりくる。・・・あ、意味内容の専門的な突っ込みは、ここでしないでね(笑

ガブリエルVというのは、全くマーケットを意識していない作りをしているが、ひょっとしたら、ピーター・ガブリエルの精神状態がかなりきていたのかもしれないと思ったりもする。Vの詩は、それまでの詩よりも著しく内向し、疎外感や孤独感をかき立て、人々の苦悩が剥き出しにされる。「No Self-Control」「I Don't Remember」「Not One of Us」といった詩もそうだが、ジャケット写真もぐちゃぐちゃだ。ガブリエルのソロのジャケットというと、TCarが車の中から目がピカー!で、UScratchが外界引き裂きギギギ…で、このVMeltが顔ぐちゃぐちゃ、WSecurityがストーカーもどきの目出し帽で、XSOでようやく素顔が現れるという(笑)・・・何ともここまでやるかなぁという感じなのだが、一番悲惨な感じがするのがこのVだからだ。ちょっと時期的には後になるが、ビデオ・クリップの名作の一つである「I Don't Remember」を見ても、かなり病的な感じなので、やはり何かあったのかと考えたくもなるのだ。・・・もっともワシはこうした病的なところが好きなのだが(笑

またこのVでは、ロバート・フィリップ、ケイト・ブッシュ、ポール・ウェラー、デイブ・グレゴリーといったゲスト参加がある。これは、ピーター・ガブリエルにとって、いろいろと刺激になったことは間違いないだろう。そうした内側の病的悲壮感と、外側からの刺激的高揚感が、微妙な化学反応を起こし、このVという名作が生まれたのかもしれない。そしてまさに、このVの音こそは、ニューウェイヴのニューウェイヴたるものを顕現させたのだ。

理屈はともかく、このVの存在感を否定できるものはいない。そして、そこから見えてきたニューウェイヴの地平に、ワシは突っ込んでいくことになる。

  Peter Gabriel:I Don't Remember
  Peter Gabriel:Games Without Frontiers
  Peter Gabriel:Biko

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ゲートエコー関連 ※画像をクリック
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel 3: Melt
フィル・コリンズ Phil Collins / Face Value
XTC / Black Sea
posted by 上村龍司 at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする