2007年09月02日

ルース・エティング:Ten Cents A Dance

Love Me or Leave Me  1930年のアメリカ・・・ここは場末のクラブ。バーボン片手に独り片隅で手持ちぶさたにしていると、そこに一人の踊り子が近づいてきて、隣に腰を下ろした。それは、ルース・エティングその人であった。

「リクエストは何?」
「10セントのダンス(Ten Cents a Dance)・・・」
「歌? それともダンス?」
「ダンスがご一緒できれば最高だね」

 僕は10セント硬貨を取り出しながら言った。ルースは微笑み返した。美人ではあったが、寂しげな陰が瞳に浮かぶのは隠せなかった。

「この歌は以前聴いたことがあって?」
パイワケット(Pyewackett)というバンドが演奏をしているのを聴いた」
「知らないわ」
「85年のトラッドのアルバムだ。君が知らないのも無理はない」
「もともとはあたしの曲・・・」
「そうだった。1930年、今年のヒット曲だ」

 そろそろバンドの準備もできたようだ。僕は彼女に視線を戻すと、こう聞いた。

「ルース、結婚生活はどう?」

 彼女の顔が曇って、気まずい空気が流れる。しばらく間を置いて、彼女は言った。

「90%は恐怖、10%は悲嘆ね。でもあたしには、これしかできない・・・」

 そう言い残すと、彼女はステージに立って歌い始めた。

 「Ten Cents A Dance」を聴いてみる。

 ステージの彼女は輝いていた。その歌声だけでなく、存在そのものが輝いていた。
 ステージを離れれば、彼女は単にシカゴのマフィア、マーティン・スナイダーのスケでしかない。このステージこそが、彼女の最も幸せな瞬間なのかもしれない。

 ・・・突然、銃声! 暗転。マール・オールダマンが撃たれたのだろうか。・・・気がつくと、僕は『情欲の悪魔(Love Me or Leave Me)』のCDを手にしていた。

 Ruth Etting : Roseland 1930 (Part 1)
 Ruth Etting : Roseland 1930 (Part 2)
 Ruth Etting : Artistic Temper 1936 (Part 1)
 Ruth Etting : Artistic Temper 1936 (Part 2)

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ルース・エティング ※画像をクリック
ルース・エティング Ruth Etting / Love Me Or Leave Me
VA / Hits Of 1930
VA / Hits Of 1931
posted by 上村龍司 at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | オールディーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする