2008年01月15日

マイク・オールドフィールド:チューブラー・ベルズからインカンテイションズ

マイク・オールドフィールド:チューブラー・ベルズマイク・オールドフィールドについては、思い入れの強さからかなかなか筆が進まなかったが、『チューブラー・ベルズTubular Bells』から『インカンテイションズIncantations』の初期4部作について書いてみようと思った次第。

1973年にヴァージン・レコード第1弾として発売されたマイク・オールドフィールドの『チューブラー・ベルズ』は、まさに衝撃的だった。若干19歳のマルチプレーヤーが、十数種類もの楽器を一人で録音し、デジタル機器もない時代に2300回に及ぶオーバーダビングを繰り返して1年余りかけて完成させた作品。7/8拍子、8/8拍子で奏でられる印象的なイントロは、ウィリアム・フリードキン監督が「今最も新しい音楽だ」として、映画『エクソシスト』のテーマ曲に使用された。それがまた『チューブラー・ベルズ』の知名度を高めることになり、結局全世界で1700万枚も売れる超ベストセラーアルバムとなった。

チューブラー・ベルズ』のジャケット・デザインも印象的だった。トライアングルのように、ぐにゃりと曲がったチューブラーベル・・・これは何だ!と最初思った。とても楽器には見えなかったのだ。その後、「ポップス・イン・ピクチャー」で「チューブラー・ベルズ」のライブが放送されたとき、チューブラー・ベルズが実はNHKのど自慢のキンコンカンの鐘だったことに気づいて愕然としたことを思い出す(笑

超完璧主義者のマイク・オールドフィールドは、1992年から『チューブラー・ベルズ』を何度も作り直すことになるが、今回はそこには立ち入らない。いずれにせよ、『チューブラー・ベルズ』がプログレッシブ・ロックの新たな地平を開いたことは間違いない。

『チューブラー・ベルズ』が好きだという友達に聞くと、決まって聞かれるのが「パート1よりパート2の方が好きだ」という意見。ワシもそうなのだが、特に「Peace」と「Bagpipe Guitars」のところがいい。このあとのアルバムのモチーフにつながっていくということで、マイク・オールドフィールドにとって重要な曲となっている「チューブラー・ベルズ(パート2)」の「セイラーズ・ホーンパイプThe Sailor's Hornpipe)」をちょっとここで。

 ♪「The Sailor's Hornpipe」を聴いてみる。

チューブラー・ベルズ』から約1年後、1974年に発表された『ハージェスト・リッジHergest Ridge』は、フォーク、トラッド、ケルト音楽などを取り入れ、牧歌的空間を創り出している。ストリングスを取り入れるなど、音楽的な試みはいろいろと見られるものの、いろんなメロディーがコラージュ然としている『チューブラー・ベルズ』と比べると、平板で作り込み不足の印象は否めない。しかし音楽としてはいいし、"作り込み不足" と言っても他のアーティストから見れば驚異的なのだが、『チューブラー・ベルズ』と比較されてしまうのが悲しいところだ。

そして1975年に発表された『オマドーンOmmadawn』、“胎内回帰”をテーマとするまさに傑作アルバムだ。「胎内回帰をテーマ」というのは、ワシの感覚にすぎないのだが、「胎内回帰」ほどこの『オマドーン』を表す言葉もないと思う。懐かしい過去にいざなうトラッドの音色。原初の子守歌のように響く女性ヴォーカル。挿入されるアフリカン・ドラムは、まさに母胎の鼓動だ。そしてイギリス民謡「オン・ホースバックOn Horseback)」での子供の歌声。心地よい揺りかごにゆられていく印象がある。

オマドーン』の構成は『チューブラー・ベルズ』に近いが、コラージュ然としている『チューブラー・ベルズ』と比較すると、『オマドーン』はかなり完成された印象を持つ。音楽的にも、当時珍しかったアフリカンドラムを導入したり、チーフタンズのパディ・モローニによるイーリアン・パイプが加わったりと、かなり意欲的だ。そして見落とすことができないのは、サリー・オールドフィールドらによる女性ヴォーカル。やはり女性ヴォーカルがマイク・オールドフィールドのキーポイントなのだ。

『オマドーン』から3年、1978年に発表された『インカンテイションズ呪文)』――それはまさに「プログレ交響曲」とも言うべき傑作アルバムだ。この『インカンテイションズ』は、オーケストラと合唱団を担当したデビッド・ベッドフォードの協力が欠かせないが、マイク・オールドフィールドがじっくりと作り込んだ芳醇な香りに満たされている。そして注目すべきは、前面にフィーチャーされたマディ・プライアーをメインとする女性ヴォーカルだろう。女性ヴォーカルの色合いが、ケルトの森の奥から深海の叙情をたたえて響いてくる。この『インカンテイションズ』こそ、まさに初期マイク・オールドフィールドの「終着の浜辺」と言える。

 Mike Oldfield : Tubular Bells (Live 1973) 1
 Mike Oldfield : Tubular Bells (Live 1973) 2
 Mike Oldfield : Tubular Bells (Live 1973) 3
 Mike Oldfield : The Sailor's Hornpipe (Montreux 1981)
 Mike Oldfield : Ommadawn (Montreux 1981) 1
 Mike Oldfield : Ommadawn (Montreux 1981) 2
 Mike Oldfield : Ommadawn (Montreux 1981) 3
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 1
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 2
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 3
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 4
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 5
 Mike Oldfield : Incantations (Exposed Tour 1979) 6

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マイク・オールドフィールド
マイク・オールドフィールド / チューブラー・ベルズ [SACD Hybrid]
マイク・オールドフィールド / オマドーン
マイク・オールドフィールド / インカンテイションズ

posted by 上村龍司 at 01:31| Comment(0) | TrackBack(2) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月30日

ピンク・フロイド:おせっかい

Meddleピンク・フロイドと言えば、ワシは『狂気The Dark Side of the Moon』をあまり評価しない人なのだ。もちろん、「虚空のスキャット(The Great Gig in the Sky)」「狂人は心に(Brain Damage)」などの「狂気」のテーマはいいし、「タイム(Time)」は名曲だと思うし、「本当は月の暗い側なんて存在しないんだよ。なぜなら、すべてが闇そのものだからね」という台詞などは特筆すべきだと思うのだが、『狂気』にはピンク・フロイドが持つ独特な広がりが乏しいから、あまり評価しなくなってしまうのだ。

やはり「狂気」をテーマにした『炎〜あなたがここにいてほしいWish You Were Here』は、シド・バレットに捧げた内省的なアルバムだが、このアルバムの方が“広がり”があってワシは好きだ。しかし、このアルバムはピンク・フロイドの“この一枚”として選ぶには物足りない。

アニマルズAnimals』『ザ・ウォールThe Wall』は、それぞれ曲は好きだし、「ザ・ウォール」の映画も面白く観たのだが、やはり類型的で陳腐な世界認識に辟易してしまう。ピンク・フロイドはそもそも、だれもが持っている内面の狂気に目を向けることで、独自の世界を構築してきたわけで、そうした意識を外側に向けて、薄っぺらな現実認識・世界観に陥って失速してしまったのは、無惨としか言いようがない。この点、ジェネシスの『眩惑のブロードウェイThe Lamb Lies Down On Broadway)』は、意識を内側に向けて成功しているわけで、非常に対照的だと思ってしまう。

てなことで、ピンク・フロイドの“この一枚”ってとき、ワシが選ぶのは『おせっかいMeddle』。

Meddle」とは、「Medal(何かを達成したときに得られるもの)」と「Meddle(干渉・邪魔するもの)」を掛けているようだが、そのサウンドは二元的相克が止揚していく感じがしないでもない。ブッチャーやシンを思い出させる(いやいや?????[???i???j)「吹けよ風、呼べよ嵐One of These Days)」で始まり、アコースティックな曲を経て、名作「エコーズEchoes)」に至る流れはさすがとしか言いようがない。

ということで、ワシはおせっかいにも『おせっかい』をピンク・フロイドの“この一枚”に選ぶのであった。

 Pink Floyd : One of These Days(Live at Pompeii)
 Pink Floyd : Echoes 1(Live at Pompeii)
 Pink Floyd : Echoes 2(Live at Pompeii)
 Pink Floyd : Echoes 3(Live at Pompeii)
 Pink Floyd : Echoes 4(Live at Pompeii)
 Pink Floyd : Time
 Pink Floyd : Wish You Were Here
 Pink Floyd : Another Brick in the Wall

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ピンク・フロイド
ピンク・フロイド / おせっかい
ピンク・フロイド / 狂気(SACD-Hybrid)
ピンク・フロイド / ザ・ウォール

posted by 上村龍司 at 16:41| Comment(0) | TrackBack(0) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年10月01日

イエス:Close to the Edge

Close to the Edge その日はわくわくして帰ったことを覚えている。イエスの『危機Close to the Edge』を買った日のことだ。

初めて聴いたイエスのアルバムは『こわれものFragile』。これでイエスが好きになっていたし、『Close to the Edge』はイエスの最高傑作と言われていたので、もうその期待感たるや相当なものだった。結局のところ、この『Close to the Edge』は、ワシが高校時代に一番聴いたアルバムとなる。ちなみに、大学時代に一番聴いたアルバムは、ジェネシスの『眩惑のブロードウェイThe Lamb Lies Down On Broadway』だ。

Close to the Edge さて、イエスと言えば外せないのが、ロジャー・ディーンのイラストだ。この『Close to the Edge』もジャケットを開けると、まずそのイラストに引きつけられた。そのイラストを見ながら「Close to the Edge」を聴いていると、イメージがどんどん広がっていく。これには正直驚いた。

このイラストは、孤立した岩?島?湖?から滝が四方に落ちていくが、まさに「Close to the Edge」を表現しているのだろう。「Close to the Edge」は「危機」なんて訳されているが、本当は「まさに崖っぷち!」って感じだろう。孤立した高台、そこに至る小径、永遠と流れ落ちる滝、わき起こる水煙が雲となって漂う・・・それは、イエスの楽曲と見事なハーモニーを奏でるファンタジーだ。

B面の「同志And You And I)」と「シベリアン・カトゥールSiberian Khatru)」も素晴らしかった。イエスの持っている広がりが3曲とも十二分に発揮されていると感じる。「And You And I」は、76年6月20日にNHKの「ヤング・ミュージック・ショー」で放送された演奏が印象深い。「シベリアン・カトゥール」は何と言っても「イエスソングス」でのヴァージョンだ。「Close to the Edge」も含め、イエスのライブ・パフォーマンスは半端ではなかった。

こうしてワシはイエスにハマっていった。やがてそこに陥穽が待ちかまえているとは、そのときには想像だにできなかったのだが・・・

 Yes : Close to the Edge 1
 Yes : Close to the Edge 2
 Yes : And You And I
 Yes : Siberian Khatru

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イエス ※画像をクリック
イエス Yes / Fragile
イエス Yes / Close To The Edge
イエス Yes / Yessongs ダウンロード

posted by 上村龍司 at 12:18| Comment(0) | TrackBack(1) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月27日

ピーター・ガブリエル:Red Rain

So もう20年が経つ。20年前の1987年6月27日、ワシはロンドンにいた。そして向かった先はアールズ・コート。ピーター・ガブリエルの“Soツアーだ。

ワシの大好きなガブリエルW「Security」。それから4年後に「So」は発表された。「So」は、どうしようもない居心地の悪さを感じさせるものだった。ガブリエルの病的神経症的なところを好んでいたワシは、「So」のわかりやすさに戸惑っていた。もちろん「So」のアルバムが悪いわけではない。一つ一つの曲が悪いわけではない。しかし居心地の悪さは否定できなかった。その中で救われた曲が「レッド・レイン」だ。

ガブリエルの言う「赤い雨」とは血のこと。それが身体にまとわりついて離れない。人間が本来持っている抑制された感情のことを歌った情念のバラードが、この「レッド・レイン」だ。

『ピーター・ガブリエル正伝』で、ガブリエルはこの曲についてこう語る。

 何年も前、いまだに忘れられない夢を見たんだ。ぼくは赤と黒のうねるような海を泳いでいて、急に海がものすごい勢いで荒れだした。すると海は二つの白い壁に分かれたんだ。一つの壁からもう一つの壁へと瓶か、はたまた人間の格好をしたものが数珠つなぎになって、赤い水を運び、やがてそれは落ちてもう一つの壁の底で粉々にくだけ散るんだ。ぼくはこれをあるストーリーの中のワン・シーンに使ったんだけど、赤い海と赤い雨は否定された感情や思考を表わしているんだ・・・

 感情や苦しさは表に出してやらないと、どんどん悪くなったりふくれあがったりするだけじゃなくて、外の世界にひとりでに出たりするんだと思う、人生では人との関係においてとか。たとえば、この場合には心の嵐を表に出さないと、どしゃ降りの雨になって現われてくるんだ。

早めに着いたワシは、会場をぶらぶらと歩いていた。1階にはWOMADの展示があり、音楽が流れていた。そして、前座のユッスー・ンドゥールのステージが終わると、いよいよ御大の登場。すごい人気だ。

1曲目は「サン・ジャシント」。ワシの大好きな曲なので、いきなり興奮してしまった。その興奮さめやらぬ間に始まった2曲目が「レッド・レイン」だった。ブラジルのあるリズムを元にしたというこの曲は、デヴィッド・ローズのがちがちなギターとトニー・レヴィンのぶっといベースに乗っていく。

  赤い雨が降ってくる
  真っ赤な雨
  赤い雨がどしゃ降りになって
  僕の体中に降り注ぐ

  赤い雨
  重圧はますます重くのしかかる
  そのたびに元の場所に立ち返るには
  赤い雨に打たれることだ
  その肌に赤い雨を受けることだ
  君のもとへ行くよ――防御を解いて
  幼子のように信じきっておくれ

 Peter Gabriel:Red Rain
 Peter Gabriel:Sledgehammer
 Peter Gabriel:In Your Eyes
 Peter Gabriel & Kate Bush:Don't Give Up

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ピーター・ガブリエル ※画像をクリック
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / SO
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / 4: Security
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel / Plays Live ダウンロード
posted by 上村龍司 at 12:06| Comment(2) | TrackBack(0) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月20日

スティーブ・ハケット:Sentimental Institution

Defectorスティーブ・ハケットの新譜買ったの? どうだった?」
「うん、なかなか。最後まで聴けばわかるよ」

そう言って、友達はスティーブ・ハケットの「Defector」のアルバムに針を落とした。僕は、スティーブ・ハケットの前作「Spectral Mornings」が気に入っていた。特に、そのアルバムのタイトル曲である「虹色の朝」の透明感が素晴らしく、この「Defector」でもそうした曲を期待していたのだ。

アルバム自体は決して悪くはなかった。5拍子や7拍子の曲があったり、B面になってハケット節が出てきたりしてスティーブ・ハケットらしさは十分なのだが、残念ながら「虹色の朝」にあった透明感は出てこなかった。「スティーブ・ハケットは、エドワード・ヴァン・ヘイレンより先にライトハンド奏法をやってたんだよね」とか、関係ないことをいろいろ考えたりもする。そして最後の曲、「Sentimental Institution」・・・え。

 ♪「Sentimental Institution」を聴いてみる。

「これか・・・いいねぇ」
「そうだろ。はまるなぁ」

よく考えてみると、この1曲だけが異質なのだが、気分は1920年代のアメリカ、ウィスコンシンって感じだ。こうしてセンチメンタルな夜は更けていくのだった。

 Steve Hackett:Ace of Wands
 Steve Hackett:Shadow Of The Hierophant 〜 Clocks
 Steve Hackett:Jacuzzi
 Steve Hackett:The Steppes

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スティーブ・ハケット ※画像をクリック
Steve Hackett:VOYAGE OF THE ACOLYTE ダウンロード
Steve Hackett:SPECTRAL MORNINGS ダウンロード
Steve Hackett:DEFECTOR ダウンロード
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2007年08月12日

プログレ5大バンドの「この1曲」!

In the Court of the Crimson King ひょっとしてこのバンドのこの1曲っていうのが選べるんではないかと思った。例えば、レッド・ツェッペリンの場合、「ベスト・アルバムは?」って言った場合、ワシは『フィジカル・グラフィティ』を挙げるのだが、「いや、Uだ。Wだ。聖なる館だ。プレゼンスだ・・・」などと議論百出の様相を呈するわけだが、「ツェッペリンの1曲は?」って言ったら、これは「天国への階段」で全員一致ってもんだ・・・しゃんしゃんしゃん????????

そこで、プログレ5大バンドで「この1曲」を考えてみることにした。プログレ5大バンドとは、ご存じのように、キング・クリムゾンピンク・フロイドイエスエマーソン・レイク&パーマージェネシスである。すると、次のようになった。

これはすんなりと挙げられたし、まあ異論のないところだろう。どれも長い曲なので、1曲の時間も記してみた。「Close to the Edge」の時間については、いろんなデータがあったが、これはおそらく小鳥の声をどこで区切るかっていう問題だろう(笑

ところでキング・クリムゾンは?ってとき、はたと戸惑ってしまった。え゛何だろう・・・「エピタフ」、「人々の嘆き」、「スターレス」、いや「クリムゾン・キングの宮殿」「太陽と戦慄パートU」もあるし、ワシが好きな「偉大なる詐欺師」や「セラ・ハン・ジンジート」は「この1曲」って感じではないし・・・なんて考えて、結局選んだのは次の曲。

ここは異論があるかもしれないが、でもやはりこの曲のような気がする。てなことで、トップには『クリムゾン・キングの宮殿』を。ちなみに、このアルバムが「ビートルズの『アビイ・ロード』をチャート1位から蹴落とした」っていうのは、イギリスのローカル・チャートでの話らしい。

 King Crimson:21st Century Schizoid Man(Hyde Park 1969)
 Pink Floyd:Echoes 1(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 2(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 3(Live at Pompeii)
 Pink Floyd:Echoes 4(Live at Pompeii)
 Yes:Close to the Edge 1
 Yes:Close to the Edge 2
 ELP:Karn Evil 9 1st impression part 2(California Jam 1974)
 ELP:Karn Evil 9 3rd impression(California Jam 1974)
 Genesis:Supper's Ready 1973 1
 Genesis:Supper's Ready 1973 2
 Genesis:Supper's Ready 1973 3

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プログレ名盤 ※画像をクリック
キング・クリムゾン King Crimson / In The Court Of The Crimson King
ピンク・フロイド Pink Floyd / Meddle
イエス Yes / Close To The Edge
posted by 上村龍司 at 12:29| Comment(0) | TrackBack(0) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月05日

ジェネシス:Supper's Ready

Foxtrotサパーズ・レディ」はジェネシスの4枚目のアルバム「フォックストロット」に収められている22分54秒の大作である。7部構成からなるこの曲は、壮大な楽曲の中に、黙示録のテイストを盛り込んだ複雑な歌詞で成り立つもので、当然ここで語り尽くせるようなものではない。ここでは、『ピーター・ガブリエル正伝』『フールズメイト Vol.11』『ストレンジ・デイズ No.67』『The Genesis Songbook』を参考に、「サパーズ・レディ」の輪郭を我龍で彫り刻んでみたいと思うのだ。



ピーター・ガブリエルが「魂をこめて、命がけで歌ってた」という「サパーズ・レディ」だが、それは、ガブリエルが当時の妻ジルとプロデューサーのジョン・アンソニーとともにいたときに見た幻覚がきっかけになっている。風もないのにカーテンが広がり、部屋の中が凍りつくぐらい寒くなる。外の芝生に白いマントを着た人影がいくつも見える。部屋全体の雰囲気が変わってしまったとき、ジルはトランス状態に入り、まるで霊媒にでもなったみたいに変な声で話し始め、まるで獣のように見えた。ガブリエルはこう語る。

あの時点で悪という感覚を経験しました。ぼくの中にそれがどれくらいあるかは分からないし、実際悪というものがどの程度はびこっているのかは分からないけれど、忘れられない経験ですし、善と悪の対決を描くきっかけになりましたね。

このガブリエルの体験が、パート1「Lover's Leap」の歌詞となって表れる。愛する二人はお互い相手を見失い、別の男女の体となって再会したという。



Peter mask ガブリエルが思索した善と悪とは何だったのか。それを解く鍵が、ジェネシスのライブ・ステージでガブリエルが語る創作寓話にある。そもそもこうした創作寓話は、楽器のチューニングや機材の故障を直す時間稼ぎのために始められたのだが、歌詞内容を補完するものになっていることも事実だ。「サパーズ・レディ」の演奏前には、「年老いたマイケル」の話が語られた。

年老いたマイケルは、決して閉ざされることのない公園の中へと、決して開くことのないペット・ショップへと歩いていった。その公園は、スムーズに行き届いていて、非常に清潔な草が一面に生えていた。マイケルは服を全部脱ぎ、そして彼のピンク色のぐにゃぐにゃした肉を濡れた清潔な草の中へこすり始めた。その地面の下では汚い茶色い虫たちが降雨のようにパラパラと演奏していた。虫たちの世界では、降雨は2つのことを意味していた。“バス・タイム”――なぜって虫たちは清潔にしているのが好きだから。そして“からまる時”――なぜって虫たちは汚くしているのが好きだから。ちょっとの範囲内、その公園は不潔なじめじめした身もだえする茶色の虫たちで覆われていた。年老いたマイケルは短い曲を鼻歌で歌うことに満足しきっていた。我々にとって「エルサレム・ブギ」であるものが、小鳥たちにとっては「夕食の準備が整った(Supper is Ready)」ということを意味していた。

閉ざされることのない公園と開くことのないペット・ショップ、清潔な草と汚い茶色い虫――対照的なシチュエーションの中で、虫たちにとっての降雨の両義性が語られる。そして、人間たちの“エルサレム・ブギ”が小鳥たちの“夕食の準備”となっているといった、価値観の相対性が提示される。善悪の価値観も、所詮は社会的観念に左右される相対的なものでしかない。



Peter flower Peter box 73年、74年と2年連続で、メロディ・メイカー紙のベスト・ライブ・アクトにジェネシスは選出されているが、この「サパーズ・レディ」を理解する上でも、ジェネシスのライブ・アクトは外せない。「サパーズ・レディ」のライブ・ビデオについては、ここにまとめておいたが、ここで重要なのは、やはりガブリエルのパフォーマンスである。「サパーズ・レディ」は、次のようにパフォーマンスが展開される。

パート2の「The Guaranteed Eternal Sanctuary Man」で、ガブリエルは茨の冠を着ける。パート5の「Willow Farm」では、曲想が大きく変化するが、そこでガブリエルが着けるのはフラワー・マスク。花に変身したナルシスと重なる。その後、8分の9拍子のリズムとともに、曲は力強いクライマックスへと向かうが、そのパート6「Apocalypse in 9/8」では、ガブリエルは反キリストを示す赤い幾何学的な形をした箱を頭にかぶり、黒いマントを着けて登場する。最後のパート7「As Sure As Eggs Is Eggs」に近づくと、そのかぶり物とマントを投げ捨てて、下から天使のようにまぶしい白の衣装を見せる。そして、最後の一節「彼らを新しいエルサレムに連れて行け」と歌ったあとには、紫外線を発光するチューブをかざす。

これらのパフォーマンスは、歌詞を補完するだけではなく、「サパーズ・レディ」の世界観を明確化していくものと言えた。



Apocalypse in 9/8」で提示された黙示録の風味が、「As Sure As Eggs Is Eggs」ではさらに色濃くなる。そこでは『ヨハネの黙示録』第19章が引用されている。

また見ていると、ひとりの御使が太陽の中に立っていた。彼は、中空を飛んでいるすべての鳥にむかって、大声で叫んだ、「さあ、神の大宴会に集まってこい。そして、王たちの肉、将軍の肉、勇者の肉、馬の肉、馬に乗っている者の肉、また、すべての自由人と奴隷との肉、小さき者と大いなる者との肉をくらえ」。――『ヨハネの黙示録』 19:17-18

ここで「Supper」は「神の大宴会(the great supper of God)」の意味となる。創作寓話で提示された「小鳥の夕食」は、「神の大宴会」へと変貌を遂げたのだ。我々は果たして、花嫁のように着飾った新しいエルサレムを見ることができるのだろうか。

 Genesis : Supper's Ready 1973 (1)
 Genesis : Supper's Ready 1973 (2)
 Genesis : Supper's Ready 1973 (3)
 Genesis : Supper's Ready Live on Belgian TV

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Genesis:Supper's Ready ※画像をクリック
ジェネシス Genesis / Foxtrot
ジェネシス Genesis / Seconds Out
ジェネシス Genesis / Platinum Collection
posted by 上村龍司 at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | プログレッシブ・ロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする