2008年02月17日

カルチャー・クラブ:ポップ化するニューウェイヴ

Culture Club:Colour by NumbersNew Wave #13.Culture Club : Colour by Numbers

ボーイ・ジョージBoy Georgeの奇抜な女装、そのファッションとメイク、そしてソウルフルな歌声とダンス・・・1982年「君は完璧さDo You Really Want to Hurt Me)」を初めて見たときの印象はもっぱらボーイ・ジョージだった。カルチャー・クラブCulture Clubは、ニューウェイヴをポップな方向へと大きく展開させていく。

カルチャー・クラブのブレイクには目を見張るものがある。1982年に「君は完璧さ」(全英1位/全米2位)がヒットすると、続いて「タイム」(全英3位/全米2位)、「アイル・タンブル・4・ヤ!」 (全米9位)がヒット。1983年にセカンド・アルバム『カラー・バイ・ナンバーズColour by Numbers』(全英1位/全米2位)が発表されると、続いて「チャーチ・オブ・ザ・ポイズン・マインド」(全英2位/全米10位)、「カーマは気まぐれ」(全英1位/全米1位)、「ヴィクティムズ」(全英3位)、「ミス・ミー・ブラインド」(全米5位)、「イッツ・ア・ミラクル」(全英4位/全米13位)とヒットを飛ばす。「戦争のうた」(全英2位/全米17位)からは失速していくが、ここまでヒット曲を連続したのは特筆すべきだ。・・・日本語で歌ったから失速した、と思ってしまうのは気のせいか。。。

カルチャー・クラブのヒットにはヴィジュアル面が欠かせないが、それにはMTVの存在が大きかった。YouTubeのリンクを下記に示しておくが、サービス精神旺盛な楽しませる作りはMTVあってこそだ。ボーイ・ジョージは、まさにMTV時代の申し子と言えるだろう。ワシが特にぶっとんだのは「ミス・ミー・ブラインド」。江戸、愛情、甘酒・・・って、おい! 日本かと思ったら、タイとコラボしてムエタイは出てくるし、「めらめらと燃えている」つうのは何なんだ・・・とゲラゲラ笑ってしまうのだが、これも親日家ボーイ・ジョージのサービス精神なのだろう。

カルチャー・クラブはやはりニューウェイヴだ。この時代多くのヒット曲を放って、ニューロマンティックと呼ばれたバンド、デュラン・デュラン、スパンダー・バレエ、カジャグーグー、ユーリズミックスなどと比べると、カルチャー・クラブの楽曲はリズムやコンセプトで格段に秀でている。レゲエ、ダブ、カリプソ、ファンカラティーナから、ソウル、ゴスペル、ファンク、モータウンといった要素をポップに昇華していくカルチャー・クラブの感覚は見事としか言いようがない。カルチャー・クラブのポップさも、レコード会社の思惑に従うものではなく、時代の流れを先読みして作り上げていったもので、ボーイ・ジョージの個性を活かそうとしたジョン・モスの作戦勝ちといったところか。いずれにせよ、カルチャー・クラブが一時期ニューウェイヴの寵児となったことは否定できない。

 Culture Club : Do You Really Want to Hurt Me
 Culture Club : Time (Clock of the Heart)
 Culture Club : I'll Tumble 4 Ya
 Culture Club : Church of the Poison Mind
 Culture Club : Karma Chameleon
 Culture Club : Victims
 Culture Club : Miss Me Blind
 Culture Club : It's a Miracle
 Culture Club : The War Song

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カルチャー・クラブ
カルチャー・クラブ / カラー・バイ・ナンバーズ
カルチャー・クラブ / ディス・タイム
ベスト・オブ・カルチャー・クラブ

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2008年02月01日

イエロー・マジック・オーケストラ(YMO):テクノポップの台頭

YMO : Solid State SurvivorNew Wave #12.Yellow Magic Orchestra : Solid State Survivor

テクノポップはニューウェイヴとワシは思っていないのだが、この時期の音楽としては無視できないので取り上げてみる。ということでYMO

イエロー・マジック・オーケストラYMOの登場は、ある種衝撃的だった。1978年のデビュー・アルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』はともかく、79年のセカンド・アルバム『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の赤い人民服とテクノカットには驚いた。そして、シンセサイザーやコンピュータを駆使した音楽、シンセサイザーの自動演奏、ヘッドフォンでクリック音を聞きながら演奏するライブ、聴衆に対して媚を売ることなく黙々と楽器と向かい合う無表情な演奏・・・。かと言って決してサウンドは無機質ではなく、メロディは秀逸でポップだし、かなり計算されて作られていることが伝わってきた。

しかし考えてみると、ライブにシンセサイザーを持ち込むのはキース・エマーソンが最初だし、自動演奏もクラフトワークがやってたことだし、アルバム『BGM』で登場するゲートエコーピーター・ガブリエルが最初だし、厳密に言えば決して“オリジナル”とは言えない。それでもYMOの存在感が否定できないのは、テクノロジーをうまくポップに昇華したからだろう。まさに改良上手な日本人! 最新テクノロジーの国日本のイメージも、YMOの国際的知名度を上げるのに貢献したことだろう。でも結局のところ、細野晴臣のエスニック・神秘主義、坂本龍一のクラシック、高橋幸宏のファッションセンスなどが融合しなかったら、YMOの化学反応は起こり得なかったのだと思う。

テクノポップの台頭と共に、この時期象徴的だった2つの曲に触れてみる。まずは1979年、バグルスの「ラジオ・スターの悲劇Video Killed The Radio Star)」だ。バグルスのこの曲が注目されたのは、きっちりと計算された音作りにあるというより、その歌詞だろう。ビデオクリップが中心になってくる時代を見越して、ラジオスターについて歌ったのは非常にタイムリーだった。1981年8月1日12時15分、MTVがアメリカで開局するが、MTVが最初にオンエアしたミュージックビデオが、この「ラジオ・スターの悲劇」だったという話。

もう1曲は、同じ1979年にヒットした、Mロビン・スコットの「ポップ・ミューヂックPop Muzik)」。ポップ化し、商業主義にまみれた音楽を皮肉ったものだ。テクノポップの曲としては、初めての大ヒットになった曲だが、この曲自体がテクノポップに対する皮肉となっていることも事実。Mは完全に一発屋なわけだが、この「ポップ・ミューヂック」1曲だけでも、その存在感は否定できない。ポップ化と商業主義のバランスは、確かに難しいものがあるのだろう。

 YMO : Rydeen (Live 1979)
 YMO : 東風(TONG POO) (Live 1979)
  YMO : Technopolis (Live 1980)
 Kraftwerk : The Robots
 The Buggles : Video Killed The Radio Star
 M : Pop Muzik

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イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)
YMO / ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー
YMO / 増殖
YMO / UC [Ultimate Collection of Yellow Magic Orchestra]

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2007年11月08日

パブリック・イメージ・リミテッド:カルト化するニューウェイヴ

The Flowers of RomanceNew Wave #9.Public Image Ltd. : The Flowers of Romance

アラーの叫び声を聞いたとき、あまりの衝撃に何が起きているのかわからなくなった。「フラワーズ・オブ・ロマンスThe Flowers of Romance」の衝撃はこうして始まった・・・

パブリック・イメージ・リミテッドPublic Image Ltd.の「フラワーズ・オブ・ロマンス」は衝撃的だった。パーカッション主体のアフリカン・ビートは重いリズムを刻み、ノイジーなギターとジョン・ライドンの呪術的な叫びが絡む。アニミズムの儀式に立ち会うかのような気分に襲われる。凝った書体で印刷された呪文のような歌詞は、ロートレアモンの『マルドロールの歌』を彷彿とさせ、現実世界を鋭く切り裂いていく。「フラワーズ・オブ・ロマンス」は、今までに聴いたことのないアルバムだった。

「フラワーズ・オブ・ロマンス」は、1981年の文句なしのベスト・アルバムだった。そしてその衝撃は何だろうと思ったとき、ワシの頭には一つの単語が浮かんだ――カルト!

カルト化するニューウェイヴ――この流れは存在したように思う。典型的なのは、サイキックTVPsychic TVだ。

Psychic TVサイキックTVを率い、その前身であるスロッビング・グリッスルのリーダーだったのが、ジェネシス・P-オリッジ。ジェネシス・P-オリッジは、「テンプル・オブ・サイキック・ユース」という教団を結成してしまう。

スロッビング・グリッスル(「脈打つ軟骨」という男根の隠語)自体が、そもそもカルト性を強く帯びていたバンドだった。スロッビング・グリッスルは、自らの音楽を“インダストリアル・ミュージック”と名づけ、工業化社会をテーマとして、具体音やノイズのコラージュ、前衛アート、呪詛的なヴォーカルやリズム・ボックスを多用する。そのサウンドは特異で、一部ではカリスマ的存在となっていた。

スロッビング・グリッスル解散後、ジェネシス・P-オリッジはサイキックTVを結成し、1982年にアルバム「Force the Hand of Chance」を発表する。このアルバムは、スロッビング・グリッスルのノイズのイメージをあざ笑うかのように、「Just Drifting」の美しいストリングスで始まる。この歌は人類終焉へのレクイエムと言われているが、それが「OV Power」の性エネルギー賛歌に高まっていく。人間のプリミティブな能力を抑圧することなく解放し制御することを意図するサイキックTVは、まさにカルトのパワーを示していた。

さて、パブリック・イメージである。「フラワーズ・オブ・ロマンス」を発表してから2年後の1983年、パブリック・イメージ・リミテッドは初来日を果たす。それは「This Is Not A Love Song」が発表されたころのことで、ワシも中野サンプラザに足を運んだ。

「Annalisa」「Death Disco」「Banging the Door」「Under the House」といった曲は、まさにパブリック・イメージでよかったのだが、セックス・ピストルズの幻影を追い求め、自己のカリスマ性を誇示しようという感じで「アナーキー・イン・ザ・UK」を歌ったのには、ワシは正直幻滅した。ロック・スターを葬り去ったジョン・ライドンが、ロック・スターを求めているように見えたのだ。このとき、ジョン・ライドンは死んだのだろうか。

その後発表された「Rise」はよかったものの、ワシは日本公演の「アナーキー・イン・ザ・UK」のイメージを払拭できないでいた。今年2007年もセックス・ピストルズの再結成ライブが行われるというが、ジョン・ライドンに「だまされた気分はどうだい」といったシニカルな発言を期待するのは、ワシだけだろうか。しかし、ジョン・ライドンがどのように変貌しようとも、ロマンスの花の香りが決して失われることはない。

 Public Image Ltd. : Flowers of Romance
 Public Image Ltd. : Flowers of Romance (Live in Tokyo)
 Public Image Ltd. : Under the House (Live in Tokyo)
 Public Image Ltd. : This Is Not A Love Song
 Public Image Ltd. : Rise
 Throbbing Gristle : Discipline
 Psychic TV : Godstar

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Public Image Ltd. ※画像をクリック
Public Image Limited:FLOWERS OF ROMANCE ダウンロード
Public Image Limited:LIVE IN TOKYO ダウンロード
Public Image Limited:PiL日本'83 DVD

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2007年10月25日

ピッグバック:華麗なるビート革命

Dr Heckle and Mr Jive New Wave #8.Pigbag : Dr Heckle and Mr Jive

1982年、ホンダのスクーター「リード」のCMに衝撃を受けた。ピッグバッグの「パパズ・ゴット・ア・ブラン・ニュー・ピッグバッグ」が流れてきたからだ。

 ♪「Papa's Got A Brand New Pigbag」を聴いてみる。

ジェームス・ブラウンの曲をもじった、この「パパズ・ゴット・ア・ブラン・ニュー・ピッグバッグ」はピッグバッグのデビューシングルだったが、そのアフロ・ジャズ・ファンクはまさにクールだった。ワシが注目したのは、ホーンセクションよりもサイモン・アンダーウッドのベースだ。とにかく、サイモンのベースラインがひたすらカッコよかったのだ。

Pigbag この「パパズ・ゴット・ア・ブラン・ニュー・ピッグバッグ」は、今ではイングランドのサッカー・プレミアリーグに所属するミドゥルズブラの応援歌になっており、かなりスタンダードな曲として認知されているようだ。それを考えると、ワシが当時すぐさまピッグバッグの虜になってしまったのも、むべなるかなである。

同じ年に出たアルバムが「ドクター・ヘッケル・アンド・ミスター・ジャイヴDr Heckle and Mr Jive)」。もう決定! その年の7月に行われた中野サンプラザの来日公演に飛びついた。それは「The Big Bean」が出たころで、ピッグバッグはまさに乗りに乗っていた。

来日公演は最初にサイモンが一言。
「スタンダップ!」
1曲目の「ゲッティング・アップ」からみんな総立ち。ノリノリの夜を過ごしたのだった。

 ♪「Getting Up」を聴いてみる。

 Pigbag : Papa's Got A Brand New Pigbag
 Pigbag : Papa's Got A Brand New Pigbag (Reach up) 1995

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ピッグバッグ関連 ※画像をクリック
ピッグバッグ Pigbag / Dr Heckle & Mr Jive
ザ・ポップ・グループ The Pop Group / Y(最後の警告)
ザ・スリッツ The Slits / In the Beginning

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2007年10月14日

ポップ・グループ:ラフ・トレードの象徴

The Pop Group New Wave #7.The Pop Group : For How Much Longer Do We Tolerate Mass Murder ?

ラフ・トレードはインディーズの走りだった。そのメンバーたるや多士済々・・・ポップ・グループ、キャバレー・ボルテール、ヤング・マーブル・ジャイアンツ、ペル・ウブ、ザ・フォール、ディス・ヒート、ドーム、レッド・クレイヨラ、ザ・レインコーツ、モノクローム・セット、マキシマム・ジョイ、ピッグバッグ、ザ・スリッツ、デルタ5、リリプット、ローラ・ロジック、TVパーソナリティズ、バージン・プリューンズ、クラス、スロッビング・グリッスル、そして、スクリッティ・ポリッティ。ラフ・トレードはまさにニューウェイヴの発信拠点と言えた。

そして、ラフ・トレードの日本編集のオムニバス「クリア・カット」がいかしてた。1はパッとした印象がないが、2の「サニー・デイ」はピッグバッグ中心に、マキシマム・ジョイ、キャバレー・ボルテール、ローラ・ロジックというクールな布陣。3の「サマー・プレイス」は、トゥインクル・ブラザース、ヒュー・マンデル、ジャッキー・ミットー、タンタン、ドン・カルロスというレゲエ特選盤。4の「フラワー・ポット」は、ザ・スリッツ、ビビアン・ゴールドマン、デルタ5、リリプット、ザ・レインコーツ、ローラ・ロジック、レッド・クレイヨラ、ヤング・マーブル・ジャイアンツという女性アーティスト特集。

Rough Trade 82年の夏だったが、この「クリア・カット」の2と3を90分のカセットに入れて、聴きまくっていたことを思い出す。友達が遊びに来たときにかけるテープはいつもこれだった。なぜって・・・それは言うまでもなく、当時一番クールな音だったから。ワシのお気に入りは、ピッグバッグとローラ・ロジックだったっけ。

このころ、日本でもナニゲにパンク・ニューウェイヴは元気だった。有名どころで言ったら、フリクション、スターリン、アナーキー、暗黒大陸じゃがたら、ゼルダ、ゲルニカ・・・。インディーズをたどっていくと、メンバーが100人いるパンゴってバンドまであったりして・・・とにかくアグレッシブなバンドが出てきた時代だった。

そして話はポップ・グループ。ポップ・グループの80年のセカンドアルバム「For How Much Longer ...」は、ラフ・トレードの象徴だった。ラフ・トレードの宣伝には、必ずこのジャケットが打ち出されていたものだ。

音はそうした宣伝に違わないほど、アグレッシブで衝撃的だった。メッセージもノイズもファンクもパンクもダブも、高いテンションでたたき込まれる。ブリストル出身のアヴァンギャルド・ダブ・ファンク・バンドの面目躍如といったところか。ワシは79年の「Y(最後の警告)」よりも、こっちのアルバムの印象が強い。しかし、頑なな政治的姿勢を貫くボーカルのマーク・スチュワートと他のメンバーとの摩擦が次第に大きくなり、ベースのサイモン・アンダーウッドがバンドを離れた後のアルバムだということに驚く。このセカンドアルバム発売直後、ポップ・グループは分裂し、事実上の解散となってしまうが、このセカンドは消えかかる直前の灯火のきらめきだったのだろうか。

ポップ・グループというと、やはりその政治的アジテーションを無視するわけにはいかない。セカンドの「オレたちゃいつまで大量殺人に耐えられるか」というタイトル、「戦火は消えない」「狂気の時」などの曲、「オレたちは娼婦だ!」という叫びなどが思い浮かぶ。そしてもっと思い出そうとすると、なぜかクラスの「ベイビー、泣いてる。ベイビー、泣いてる・・・」「ナガサキ・ナイトメア、ナガサキ・ナイトメア・・・」なんてのが出てきたりして、はなはだ記憶があいまいであることに気づく・・・英語が苦手で音だけ聴いていた証拠だな(笑)。いずれにしても、ポップ・グループのアグレッシブな音が、ニューウェイヴに大きな痕跡を残したことはだれも否定できない。

 The Pop Group : She is beyond Good and Evil
 The Pop Group : The Boys from Brazil

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ラフ・トレード関連 ※画像をクリック
ザ・ポップ・グループ The Pop Group / Y(最後の警告)
スリッツ The Slits / Cut
スクリッティ・ポリッティ Scritti Politti / Early

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2007年09月17日

ギャング・オブ・フォー:ソリッドなギター

Solid Gold New Wave #6.Gang of Four : Solid Gold

そのギターに魅せられた。ギャング・オブ・フォーの『ソリッド・ゴールド』1曲目「パラライズドParalysed)」だ。

 ♪「Paralysed」を聴いてみる。

スネアのリムショットにかぶるアンディ・ギルのカッティング、そしてこの間(ま)。ルービンシュタインが「音符の弾きかたに違いがあるわけではない。休止、そう休止部分なんだよ」と語っているが、まさに休止部分が重要であることを認識させる・・・という理屈より前に衝撃的だった。

ワシがギャング・オブ・フォーを最初に聴いたのは『ソリッド・ゴールド』だったのだが、完成された印象の強い『ソリッド・ゴールド』よりも、ファースト『エンターテイメント!』の方がギターの衝撃度はあると思う。ソリッドにカッティングされたアグレッシブなギター・・・なんて書くと陳腐な表現になってしまうきらいがあるが、聴いてみれば明々白々。アンディ・ギルのギターに、ジョン・キングの政治的メッセージとファンク・ビートがかぶるラディカルな緊張感は、ダイレクトにこの世界のシステムを切り裂いていく。その亀裂こそが、まさにニューウェイヴのレーゾンデートルと言えた。後のバンドに与えた影響力から見ても、この評価は決して誇張ではない。

そして『ソリッド・ゴールド』だが、このアルバムは決してファーストに劣るわけではない。バンドの方向性が明確になり、贅肉をそぎ落とした印象がワシにはある。そこにはメンバーの自負も感じられる。その中の「What We All Want」が、イタリアかどこかのファッションショーで使われているのを当時テレビで見たことがあったが、それだけバンドの評価も上がっていたのだろう。ギターの切れ味は相変わらずだ。

その後、ギャング・オブ・フォーは失速。結局2枚のアルバムだけが聴き応えのあるところとなってしまう。しかし、この“四人組”が現実をアグレッシブに切り裂いた事実は残る。ギャング・オブ・フォーが残した大きな足跡は、ロックにおいてだれも否定することはできない。

 Gang of Four : Damaged Goods
 Gang of Four : Anthrax
 Gang of Four : What We All Want
 Gang of Four : To Hell With Poverty

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ギャング・オブ・フォー ※画像をクリック
ギャング・オブ・フォー GANG OF FOUR / Entertainment!
ギャング・オブ・フォー GANG OF FOUR / Solid Gold
ギャング・オブ・フォー GANG OF FOUR / return the gift

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2007年08月22日

U2:ストラトの系譜

WAR New Wave #5.U2 : WAR

ニューウェイヴがストラトというイメージができたのは、いつからだろう。まず思い出すのは、U2エッジだ。エッジのカッティングやディレイはカッコよかったし、これこそニューウェイヴのギターだと思ったものだ。

U2のアルバムと言えば、やはり「WAR」だろう。最初から最後までたるむことのない、このアルバムの完成度は非常に高く、ワシの中では「Boy」や「October」の印象を吹っ飛ばしてしまっている。「WAR」について、ボノは「『WAR』とはいろんなレベルにある『戦い』を扱ったものなんだ。・・・確かに『戦い』がテーマだ。それも、何かを壊して新しいものを築いていくためのもの。決して否定的なアルバムなんかじゃないんだよ」と言い、その重いテーマを歌うのだが、BGM的に聞き流していたワシには歌詞がよくわかっていない。それでも「WAR」の音には魅せられた。

エッジのストラトが印象深いのは、ひょっとしたら「New Year's Day」のビデオクリップなのかもしれない。雪の中での演奏に、戦闘シーンがかぶる。乗馬シーンにピアノが鳴る。うは、寒そう・・・と思いつつ見ているが(でもワシはこの寒い中での演奏シーンって、やたらと好きなんだな。うん)、ボノの力強いボーカルもあって妙に惹かれた。そこに奏でられるエッジの印象深いギタープレイが心地よい。やはり「New Year's Day」は絶品だ。

U2の「WAR」は83年なので、その前にストラトのイメージはなかったのかと考えると、やはり出てくるのはエイドリアン・ブリューだ。

エイドリアン・ブリューを知ったのは、トーキング・ヘッズのときだったが、やはり大事件だったのは新生キング・クリムゾンだ。エイドリアンの加入で、クリムゾンがヘッズ化したと言われたりもするが、いつもアグレッシブで、プログレッシブを求めるロバート・フィリップの嗅覚と度量の広さに、ワシは感心する。この「Elephant Talk」のライブでのロバート・フィリップの笑顔を見ると、まさに彼の計算どおりにエイドリアンがはまったという感じだ。

それにしても「Discipline」でのエイドリアンのギターには、度胆を抜かれた。え゛、これゾウかよ・・・。ソロアルバム「ローン・ライノウ」では、ネコとサイ。動物の鳴き声は、ダイキンのCM()で、その後お茶の間でも有名になるが、当時はびっくりしたものだ。まあ、ゾウに限らず、他の曲においても、エイドリアンの独創的・変幻自在のギターはホントすごい。まさにキング・クリムゾンの復活だった。

思い起こしてみると、エイドリアン・ブリューとエッジが、ワシのニューウェイヴのギターのイメージなのだった。・・・おっと、アンディ・ギルを忘れてはいけない。

 U2:New Year's Day
 U2:Sunday Bloody Sunday (Live Red Rocks)
 King Crimson:Elephant Talk
 King Crimson:Thela Hun Ginjeet
 Adrian Belew:ダイキンCM 1
 Adrian Belew:ダイキンCM 2
 Adrian Belew:ダイキンCM 3

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エッジ & エイドリアン・ブリュー ※画像をクリック
U2 / WAR(闘)
U2 / U218 Singles
キング・クリムゾン King Crimson / Discipline
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2007年08月17日

ポリス:ニューウェイヴの牽引者

Reggatta de Blanc New Wave #4.The Police : Reggatta de Blanc

パンクとニューウェイヴの最大の違いは、その演奏力だろう。演奏力の違いを見せつけたバンドとして、ワシはポリスを思い浮かべる。パンクを指向した彼らが演奏力をひけらかすことはなかったが、桃李もの言わざれども・・・演奏力の高さはだれが聴いても自然とわかってしまうのだ。

ジャズロック風味のスティングのベースとボーカル、元カーヴド・エアーのスチュワート・コープランドのエキサイティングなドラム、元ニューアニマルズ、ソフト・マシーンのアンディ・サマーズのマルチなギタープレイ。この3人が織りなすレゲエパンクは、正直言ってカッコよかった。80年前後は、ポリスを聴いていることがまず前提みたいなところもあった。ジミヘンクリームのように、3人が責任と緊張感の中で鎬(しのぎ)を削るギタートリオ――コープランドが提示したこの戦略が、3人の才能をうまく引き出したと言えるのかもしれない。

ポリスの洗練された演奏が、パンクではない、パンクを利用したなどと言われたりもするが、78年のファースト『Outlandos d'Amour』で、「ロクサーヌ」が売春婦の名をタイトルにしたことで放送禁止、「キャント・スタンド・ルージング・ユー」が自殺をテーマにしているということで放送禁止となっていることなどを考えると、十分にパンク性を持っていたことは明らかだ。そして、パンクにとどまらず、パンクを軽いステップで踏み越え、ニューウェイヴの中心的存在となっていくのが、ポリスのポテンシャルなのだろう。ちなみに、この2曲はビデオにリンクさせといたが・・・今見ると、その安直な作り方と3人のはしゃぎ方は、おいベース弾けよ、シンバル合ってねえよ・・・って笑える^^。

この79年のセカンド『Reggatta De Blanc(白いレガッタ)』は、“ロックンロールの馬力にうねるようなレゲエの持ち味を切れ目なく溶接するハイブリッド音楽の創造”というポリスのコンセプトが明確に打ち出されている。タイトルの「Reggatta」は、「regatta(レガッタ)」を「reggae(レゲエ)」っぽくしたものだと思うが、そこからも彼らのスタンスは明らかだ。しかし改めて聴くと、ホワイト・レゲエの曲が思ったより少ないことに驚かされる。「ポリスはレゲエ」という観念がいつの間にか肥大化していたようだ。

だからと言って、それがこのアルバムの価値を引き下げるものではない。「孤独のメッセージ」で始まるこのアルバムのグルーヴ感は、心地よく聴き手を揺さぶる。コープランドのオカズの多い切れのいいドラムに、サマーズの多彩なギター、スティングの力強いベースとハイトーン・ボーカルがかぶる。このセカンドとサードの『Zenyatta Mondatta』を90分テープに録音し、懐かしのウォークマン初号機に入れて、よく街中を歩いたものだ。ビデオクリップを見ているかのように、街はポリスのノリに染められていった。まさに快感!だ。

その後ポリスは、81年の『Ghost in the Machine』で音をいろいろと広げていくが、このアルバムのシンセの音は正直好きになれなかった。しかし「Every Little Thing She Does Is Magic」が個人的に大好きなのでよしとしよう。またこの「Ghost in the Machine」というタイトルは、アーサー・ケストラーの『機械の中の幽霊(The Ghost in the Machine)』から来たのだろうが、同様にこの本から『攻殻機動隊(The Ghost in the Shell)』が出ていることを考えると、いとをかし(笑)。そして83年には名作『Synchronicity』を発表。これだけクオリティの高いアルバムを5作続けて出した力量は、ホント大したものだと思う。

78年から83年という短期間だったが、ポリスの衝撃は深く刻み込まれた。まさにポリスは、ポスト・パンクの時代を駆け抜けるニューウェイヴの牽引者であった。

 The Police:Roxanne
 The Police:Can't Stand Losing You
 The Police:Message In A Bottle
 The Police:Don't Stand So Close To Me
 The Police:Every Little Thing She Does Is Magic
 The Police:Every Breath You Take

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ポリス ※画像をクリック
ポリス Police / Outlandos D'amour
ポリス Police / Reggatta De Blanc
ポリス Police / Synchronicity
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2007年08月15日

パブリック・イメージ・リミテッド:ニューウェイヴの雄

Second Edition New Wave #3.Public Image Ltd. : Metal Box

ロックは死んだ

ジョン・ライドンのこの言葉からニューウェイヴの門は開かれた。作られたパンクの虚像をぶっ飛ばし、商業主義に陥り形骸化したロックを葬り去ったジョン・ライドンが行き着いたところは、ニューウェイヴというロックの流れだった。ジョン・ライドンは、またしても制度化の迷宮に絡め取られることになる。

先を急ぐことなく、このメタル・ボックスを見るならば、そのアグレッシブな姿勢は評価されていい。先鋭的なパブリック・イメージの音は、まるでロックの墓碑銘を明らかにするように、我々の観念を切り裂いていく。・・・などとシリアスなノリで今回は始めてしまったが、それもジョン・ライドンに対する思い入れの強さなのか(笑

ワシがパブリック・イメージを聴いたのは、ファーストではなく、このセカンドが最初だった。これはワシのよくあるパターンで、流行を先取りするってことができず、いつも反応が鈍いがゆえにこうなってしまうんで、別に意図しているわけではない。このメタル・ボックスにはホント驚かされた。セックス・ピストルズのイメージしかなかったワシは、「え?え?ジョニー・ロットン?なに?」って感じだった。でもこのあたりのインパクトは、当時のリアルタイムでないとないのかもしれないとも思う。・・・あ、そうそう、当時ワシらは「PiL(ピル)」と呼ぶのはイモだし、「パブリック・イメージ・リミテッド」と呼ぶのは長すぎるので、「パブリック・イメージ」と呼んでいた。ここではその言い方を踏襲するので、よろしくね。

最初インパクトを与えたのは、ジャー・ウーブルの重いベースだった。その重い音色はロックを解体して、その破片を深い水の底に沈めていくようにも思えた。そこに、キース・レヴィンの神経質でフリーキーなギターと、マーティン・アトキンスの無機質なドラムがかぶるわけだが、何と言ってもジョン・ライドンだ。ジョン・ライドンのボーカルは、アジテーションのごとく、ラディカルな魂の叫びを発し、ロック・スターをずたずたに切り裂いていく。その歌詞においても、かつて「だまされた気分はどうだい」と言い放った、ジョン・ライドンのシニカルさは健在だ。まさに、イギリスならではのニューウェイヴのクールを体現していた。

Metalbox メタル・ボックスを聴いたあと、ファーストを聴いた。まだパンクを引きずっている嫌いのあるファーストと異なり、メタル・ボックスでは音の方向性がはっきりとしていることがわかった。こうした音の自信が、「できるだけいい音質で提供する」というメタル缶のコンセプトのつながっていくのだろう。そのころ、高価だったそのメタル缶を見上げては、「欲しいなぁ」と指をくわえて、よだれを垂らしていたワシを思い出す・・・って子供かワシは(笑

このあと、パブリック・イメージは「The Flowers of Romance」というすさまじい衝撃を残すことになるが、それについては稿を改めよう。

 Public Image Ltd.:Public Image
 Public Image Ltd.:Poptones
 Public Image Ltd.:Careering
 Public Image Ltd.:Memories

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Public Image Ltd. ※画像をクリック
Public Image Limited:METAL BOX ダウンロード
Public Image Limited:FLOWERS OF ROMANCE ダウンロード
Public Image Limited:LIVE IN TOKYO ダウンロード
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2007年08月09日

トーキング・ヘッズ:ニューウェイヴの源流

Remain in Light New Wave #2.Talking Heads : Remain in Light

トーキング・ヘッズを聴いたのはいつのことだったか。今野の雄ちゃんがしきりに「ヘッズ、ヘッズ」と絶賛していたことを思い出す。ひねくれ者のワシは、あまり絶賛されると聴く気が失せてくるので、なんだかんだと後回しにしてしまった。結局聴いたのは、トムトム・クラブと一緒だったから、81年のことになる。そのとき、「何ですぐにヘッズを聴かなかったんだろう」と悔やんだものだが、まあこのへんはワシの性格ということでどうにもならんのだな・・・?????[???i???j

ニューウェイヴを語る上で、絶対に外せないのが、この「Remain in Light」だと思う。まあこれは、ワシが声高に言わなくても、だれしもが認めるところだろう。ニューウェイヴとは何かというと、パンク・ロックのあとのロック・ムーブメントくらいの漠然としたものだと思うが、そのリズムには特徴があった。レゲエ、スカビート、リズムマシーンの導入など、“リズム革命”とでも言えるものがそこにはあった。ヘッズの場合は、アフロビート中心に取り入れたわけだが、当時その試みには驚かされた。普通「ロックとの融合」とか言って下手なことをすると空回りして失速するものだが、ヘッズの場合すごいノリで迫ってきたのだ。

この「Remain in Light」は今聴いてもその新鮮さに驚かされる。それは、デヴィッド・バーンをはじめとするティナ、クリス、ジェリーの4人の力量はもちろんだが、エイドリアン・ブリューのギター、ブライアン・イーノのプロデュースが結晶してできたからだろう。

Tom Tom Club またティナとクリスのトムトム・クラブがいかしてた。明るいノリで、ラップ、エスニック。「Tom Tom Club」の存在感は今も残っている。「おしゃべり魔女」のらっさんさん、らっさんさん、くにくにくにくに、あっさんさん????????・・・はホントに聴いてるだけでほほ笑ましいのだ。ヽ(´ー`)ノ

極めつけは、映画「Stop Making Sense」だろう。何にもないステージにデヴィッド・バーンがラジカセを持って一人で出てきて「Psycho Killler」。ラジカセにけっつまずかないかなと見ていると、次はティナが出てきて、黒子然としたスタッフがステージを組み立て始める。クリス、ジェリーと出てきて、サポート・メンバーが勢ぞろいするころには、ステージも万全。バーンはくねくねダンスやライトスタンドのアクションなどしながら、「Once In A Lifetime」では痙攣ダンス。「Girlfriend Is Better」のだぼだぼスーツ、トムトム・クラブのティナの土着ダンスと、パフォーマンスも盛りだくさん。ライブのノリもあわせて、まさにヘッズの存在感を見せつけたという感じだ。またこの映画はカメラワーク・ライティング・編集のうまさも特筆すべきだろう。

「正気でいようとするなよ!(Stop Making Sense)」と言うセンスの良さ、ロックとアフロビートの融合、そしてそのノリのすごさ、ちょっと変人的パフォーマンス(笑)・・・トーキング・ヘッズはニューウェイヴの源流とも言える存在感なのだ。

 Talking Heads:Psycho Killler
 Talking Heads:Once In A Lifetime
 Talking Heads:Girlfriend Is Better
 Tom Tom Club:Wordy Rappinghood
 Tom Tom Club:Genius of Love

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トーキング・ヘッズ関連 ※画像をクリック
トーキング・ヘッズ Talking Heads / Remain In Light (DualDisc)
トム・トム・クラブ Tom Tom Club
ト−キング・ヘッズ/ストップ・メイキング・センス<完全版>
posted by 上村龍司 at 12:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月06日

ピーター・ガブリエルV:ゲートエコーの衝撃

Peter Gabriel 3: Melt New Wave #1.Peter Gabriel VMelt

「ド、ド、タ、ド、ド、タッ! ド、ド、タ、ド、ド、タッ!・・・」

そのアルバムは衝撃的な音から始まった。ピーター・ガブリエルのサードアルバム、最初の曲「Intruder」のゲートエコーの音には驚かされた。・・・な、なんだ、このスネアの音は!って感じだった。

こんな音マネでは、あまりにもしょぼいので、「Intruder」のイントロをアップしてみる。

 ♪「Intruder」を聴いてみる。

ピーター・ガブリエルというと、いろいろと思い入れがあるわけだが、そうしたことを抜きにしても、このゲートエコーの音はすごかった。このアルバムが発表されたのは80年。「できるだけいい音質を提供する」といったコンセプトで、レコードをメタル缶に入れた、パブリック・イメージの「メタル・ボックス」が発売されたのが同時期なので、これは録音技術が格段に進化した年と考えて間違いない。

ところで、そのゲートエコーだが、ワシはてっきりガブリエルVのプロデューサーであるスティーブ・リリーホワイトが作ったとばかり思っていたのだが、調べてみると、作ったのはエンジニアのヒュー・パジャムフィル・コリンズ、それを一般化したのがスティーブ・リリーホワイトということだ。でもこうした音を求めていたピーター・ガブリエルなしには成り立たなかったわけで、やはりガブリエルなしにはゲートエコーはあり得なかったと思う。そもそもVでは、リズムから曲を作るスタイルをはじめ、シンバルとハイハットを取っ払ったり、ドラム・マシーンやフェアライト・シンセを導入したり、アフロ・リズムをやったりといった“リズム革命”が試行されていて、ゲートエコーはそこにぴったりはまったという感じなのだろう。ちなみに、この「ゲートエコー」は「ゲート・リバーブ(Gated reverb)」という言い方もあるが、その当時は「ゲートエコー」って言われていたので、その方がワシ的にはぴったりくる。・・・あ、意味内容の専門的な突っ込みは、ここでしないでね(笑

ガブリエルVというのは、全くマーケットを意識していない作りをしているが、ひょっとしたら、ピーター・ガブリエルの精神状態がかなりきていたのかもしれないと思ったりもする。Vの詩は、それまでの詩よりも著しく内向し、疎外感や孤独感をかき立て、人々の苦悩が剥き出しにされる。「No Self-Control」「I Don't Remember」「Not One of Us」といった詩もそうだが、ジャケット写真もぐちゃぐちゃだ。ガブリエルのソロのジャケットというと、TCarが車の中から目がピカー!で、UScratchが外界引き裂きギギギ…で、このVMeltが顔ぐちゃぐちゃ、WSecurityがストーカーもどきの目出し帽で、XSOでようやく素顔が現れるという(笑)・・・何ともここまでやるかなぁという感じなのだが、一番悲惨な感じがするのがこのVだからだ。ちょっと時期的には後になるが、ビデオ・クリップの名作の一つである「I Don't Remember」を見ても、かなり病的な感じなので、やはり何かあったのかと考えたくもなるのだ。・・・もっともワシはこうした病的なところが好きなのだが(笑

またこのVでは、ロバート・フィリップ、ケイト・ブッシュ、ポール・ウェラー、デイブ・グレゴリーといったゲスト参加がある。これは、ピーター・ガブリエルにとって、いろいろと刺激になったことは間違いないだろう。そうした内側の病的悲壮感と、外側からの刺激的高揚感が、微妙な化学反応を起こし、このVという名作が生まれたのかもしれない。そしてまさに、このVの音こそは、ニューウェイヴのニューウェイヴたるものを顕現させたのだ。

理屈はともかく、このVの存在感を否定できるものはいない。そして、そこから見えてきたニューウェイヴの地平に、ワシは突っ込んでいくことになる。

  Peter Gabriel:I Don't Remember
  Peter Gabriel:Games Without Frontiers
  Peter Gabriel:Biko

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ゲートエコー関連 ※画像をクリック
ピーター・ガブリエル Peter Gabriel 3: Melt
フィル・コリンズ Phil Collins / Face Value
XTC / Black Sea
posted by 上村龍司 at 12:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ニューウェイヴ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする