2007年12月31日

プログレッシブ・ロック好きのためのベートーヴェン第九「合唱」入門

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン大晦日である。大晦日と言えば第九である。第九というのは、言うまでもなくベートーヴェン交響曲第9番ニ短調作品125「合唱(Choral)」のことである。

タイトルに『ベートーヴェン第九「合唱」入門』などと偉そうなことを言ってしまったが、今回の企画は、プログレッシブ・ロック好きな人が好きそうな第九の3つのパートを取り上げて、音楽鑑賞してみようというだけなのだ。・・・てなことで、気楽にお付き合い願いたい。

プログレッシブ・ロックがここで出てくるのは、別に奇妙なことではない。第九こそ、当時最も斬新でプログレッシブな交響曲だったのだから。まず、交響曲に声楽が使用されたのが珍しく、真に効果的に声楽が使用されたのは初めてと言える。そして、大規模な編成や1時間を超える長大な演奏時間においては、それまでの交響曲でほとんど使用されなかった打楽器(シンバルやトライアングルなど)の使用、ドイツ・ロマン派の萌芽を思わせる瞑想的で長大な緩徐楽章(第3楽章)の存在、そして独唱や混声合唱の導入など、ベートーヴェン自身のものも含むそれ以前の交響曲の常識を打ち破った大胆な要素を多く有している。

この第九こそ、まさに“プログレッシブ・シンフォニー”であって、古典派の以前のあらゆる音楽の集大成とも言えるような総合性を備えている。同時に、来るべきロマン派音楽の時代の道しるべとなった記念碑的な大作なのだ。――などと、音楽の教科書のような記述はここまでとして(笑)、曲に入ろう。音源は、1987年12月、ベルナルト・ハイティンク指揮、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団演奏のベートーヴェン第九を用いた(これは本当に名盤だと思う)。

まずは第2楽章の冒頭からである。

 ♪「ベートーヴェン第九第2楽章」を聴いてみる。

弦楽器の間にたたき込まれるティンパニで始まるこの第2楽章は、フーガのようにテーマが絡み合う提示部へと移行する。3/4拍子のスケルツォで奏でられる弦楽器の旋律は抜群で、そのアクセントが際立つ。そして、展開部ではティンパニが活躍し、木管楽器と弦楽器の掛け合いがあり、盛り上がりを見せる。プログレ好きなら、おっ!と思うところだろう。

次は第4楽章の冒頭部分である。

 ♪「ベートーヴェン第九第4楽章 その1」を聴いてみる。

管楽器が悲劇的な旋律を奏でるが、チェロとコントラバスの低弦がそれを否定する。続いて、第1楽章、第2楽章、第3楽章が奏でられるが、次々と低弦に否定される。この進行は、まるで演劇でも見ているように“言語的”だ。そして、低弦が「歓喜の歌Ode to Joy)」を奏で始め、ヴィオラ、ファゴット、ヴァイオリンと、歓喜の主題が広がっていく。最後に管楽器に旋律が渡され、全管弦楽で歓喜の主題が輝かしく歌い上げられる。この主題の提示の仕方は、まさにベートーヴェンだと思うわけだが、これを“プログレしてる”と見てしまうのはワシだけだろうか。

そしてもう一つ。第九第4楽章の最も有名なところである。

 ♪「ベートーヴェン第九第4楽章 その2」を聴いてみる。

まずは行進曲が始まり、どうしても『時計じかけのオレンジ』を思い出してしまう(笑)テノール独唱へと続く。そして純粋な管弦楽のみによる演奏へと続くが、この旋律の妙! この旋律はまさにプログレだ。その後静かになり、長調→短調と管弦が鳴ってから、「歓喜の歌」が高らかに歌い上げられるが、まさに歓喜だ。

この「第九の合唱」は世界で最も有名なメロディーだと思うが、有名なのは有名なりに意味がある。それは、第九が神の栄光を顕した最もプログレッシブな交響曲だったからではないだろうか。第九こそ、まさに“プログレッシブ・シンフォニー”!――思わず、そう呼んでしまうワシなのであった。

 Beethoven Symphony No.9 : Bernstein 1989 (part 1)
 Beethoven Symphony No.9 : Bernstein 1989 (part 2)
 Beethoven Symphony No.9 : Bernstein 1989 (part 3)
 Beethoven Symphony No.9 : Bernstein 1989 (part 4)

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ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱」
フルトヴェングラー1951 ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
カラヤン普門館ライヴ1979 ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》
ハイティンク1987 ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》

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2007年12月24日

1984年三つのライブ:ブラック・ウフル、スティール・パルス、キング・サニー・アデ

Black Uhuru : Tear It Up LiveNew Wave #11.Black Uhuru, Steel Pulse, King Sunny Ade

ブラック・ウフルの初来日は1984年7月。「ライブ・アンダー・ザ・スカイ」での来日で、よみうりランドのオープンシアターEASTでライブを見た。真夏の暑い日射しが降り注ぐなか、ワシはその芝生の自由席にいた。

ブラック・ウフルと言えば、マイケル・ローズ、ダッキー・シンプソン、ピューマ・ジョーンズのボーカル・トリオに、“レゲエ・タクシー”たるスライ・アンド・ロビーのリズム隊。まずはスラロビ。真夏の暑い中で、ワシらを心地よく乗せてくれた。リズムのノリはもちろん最高なのだが、長いスティックを振り回してシンバルを叩くスライ・ダンバーと、マシンガンを持つようにベースを奏でるロビー・シェイクスピアの姿は、ヴィジュアル的にも魅せるものだった。

このときはアルバム『アンセム』が発売され、「ソリダリティ」がヒットするなど、ブラック・ウフルまさにノリノリの時期だった。ライブもノリノリなわけだが、そこで目立ったのはやはりマイケル・ローズだった。マイケル・ローズの声が、真夏の空に伸びやかにこだまするのを聴いていると、ブラック・ウフルはマイケル・ローズなしにはあり得ないと思ったものだった。ラスタのお兄ちゃんがぴょんぴょん跳ねてた、勝手気ままな芝生席で、気持ちよく乗らせてくれたブラック・ウフルだったのだ。

Steel Pulse : Earth Crisisスティール・パルスはブラック・ウフルと対照的で、その来日は1984年1月。雪の降る寒い日だった。実は酔っぱらっていて記憶がはなはだあいまい・・・(汗)、場所はネットで書かれていた渋谷公会堂や日本青年館ではなく、赤坂のニューラテンクォーターだった気がするワシなのだが、はなはだ自信がない・・・

とにかく覚えているのは、気持ちよくノリノリで踊りまくったことと、デヴィッド・ハインズのあの頭!だ。しかし、デヴィッド・ハインズがそのとき帽子をかぶっていたかどうかもあいまいで・・・「やはり人前でラスタの姿は見せないのだな」と思ったようなので、帽子をかぶっていた可能性が高い。友達と気持ちよく酒飲んで踊っていたので、申し訳ないが、これはまるでレポートにならない。ただ「おお〜っ!」とか「最高!」などと、酔っぱらって叫んでいたことは事実なのだ(笑

調べてみると、スティール・パルスはアルバム『アース・クライシス』の発売前に、『ロッキン・オン』が招聘して来日したそうだ。『アース・クライシス』と言えば、ジャケットに描かれていたアンドロポフが発売1カ月もしないうちに亡くなるという、いわくつきのアルバムだった。

King Sunny Ade : Synchro Systemそして1984年10月に、とんでもない台風が上陸した。キング・サニー・アデ&ヒズ・アフリカン・ビーツ。場所は代々木第一体育館。仕事帰りにわくわくして、足を運んだものだ。

まさにジュジュ・ミュージックの迫力。トーキング・ドラムをはじめとする多くのドラム、パーカッションが刻むリズムのうねりに乗って、キング・サニー・アデの歌声が響く。超弩級のノリで踊りっぱなしで乗せられた。アルバム『シンクロ・システム』にある数分の曲が、どれも10分を超える長さになるのには正直驚いたが、これは元々長い曲をアルバムでは縮めているという話。そのすさまじいノリに、当然アンコールとなる。

そして、このアンコールがなんと1時間にも及んだ。このころになると、「おいおい、いつまでやるんだよ・・・」と苦笑い、こっちの体力が続かない。「やっぱ仕事帰りはきついよな・・・」とか思うが、全く下手な言い訳をしているようなのだ(笑)。とにかくキング・サニー・アデはすごかった。

1984年にスティール・パルスブラック・ウフルキング・サニー・アデと、レゲエ、アフロの代表的ミュージシャンが集中して来日したのは偶然なのかもしれないが、ワールド・ミュージックの関心が高まり、『ミュージック・マガジン』を読むことが当たり前の当時としては違和感のないものだった。結局のところ、言葉では表現しづらいので、YouTubeのビデオを観てほしいと思ってしまうワシであったのだ。

 Black Uhuru : Shine Eye Gal 〜 Plastic Smile
 Black Uhuru : General Penitentiary 〜 Guess Who's Coming To Dinner
 Black Uhuru : I Love King Selassie
 Black Uhuru : Solidarity
 Steel Pulse : Handsworth Revolution
 Steel Pulse : Ku Klux Klan
 Steel Pulse : Sound System
 King Sunny Ade : Synchro System
 King Sunny Ade : Maajo 〜 Penkele

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ブラック・ウフル、スティール・パルス、キング・サニー・アデ
アイランド・レゲエ・クラシックス / ブラック・ウフル
アイランド・レゲエ・クラシックス / スティール・パルス
キング・サニー・アデ / オドゥ〜

posted by 上村龍司 at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | レゲエ・アフロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月11日

レッド・ツェッペリン:カシミール、そしてジミー・ペイジのオープン・チューニング

Led Zeppelin レッド・ツェッペリンのブートレッグの中で、一番カッコいいナンバーは「ホワイト・サマー」「ブラック・マウンテン・サイド」から「カシミール」に入る演奏だった。特に「カシミール」に入るところは、おお〜っ!てな感じだった。ブートレッグのタイトルははっきりと覚えていないが、これが1977年のUSツアー以降のものであることは間違いない。

ジミー・ペイジオープン・チューニング(変則チューニングともいわれる)をワシが初めて知ったのは「ホワイト・サマー」だったが、このライブによって「カシミール」も「ホワイト・サマー」と同じオープン・チューニングであったことを知った。いわゆる "DADGADチューニング" というやつだ。それでちょっと、ジミー・ペイジのオープン・チューニングについてまとめてみた。

●DADGAD チューニング
ホワイト・サマー、ブラック・マウンテン・サイド、カシミール
●オープンG(DGDGBD)チューニング
ザッツ・ザ・ウェイ、ブラック・カントリー・ウーマン、トラベリング・リバーサイド・ブルース
●DADGBD チューニング
カリフォルニア
●オープンC6(CACGCE)チューニング
フレンズ、ブロン・イ・アー、プア・トム
●オープンC(CGCEGC)チューニング
ハッツ・オフ・トゥ・ロイ・ハーパー
●DGCGCD チューニング
レイン・ソング
●CFCFAF チューニング
スノウドニアの小屋
●EACFAC チューニング
レヴィー・ブレイク

ちなみに「カシミール」の歌詞は、ロバート・プラントがモロッコ南部のサハラ砂漠をドライブしていたときに書かれたもので、「見失った故郷を求めての放浪」をテーマにしており、現実のカシミールがイメージの源泉になったわけではない。後に、ロバート・プラントは「カシミール」を "The Pride of Led Zeppelin" (レッド・ツェッペリンの誇り)と呼んでいる。

レッド・ツェッペリン関連記事

#07年12月10日のレッド・ツェッペリン再結成コンサートは、予想どおり大盛況だったようです。レッド・ツェッペリンは今後も活動を継続するような話も出ていますが、さてどうなりますことやら。

 Led Zeppelin : White Summer / Black moutain Side 1
 Led Zeppelin : White Summer / Black moutain Side 2
 Led Zeppelin : Kashmir
 Led Zeppelin : Ten Years Gone

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レッド・ツェッペリン
レッド・ツェッペリン / フィジカル・グラフィティ
レッド・ツェッペリン / マザーシップ(DVD付き)
レッド・ツェッペリン / DVD

posted by 上村龍司 at 18:22| Comment(0) | TrackBack(1) | ハードロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月09日

レッド・ツェッペリン:イン・スルー・ジ・アウト・ドア

In Through the Out Doorイン・スルー・ジ・アウト・ドアIn Through the Out Door』は、レッド・ツェッペリンのアルバムの中では異色というイメージがある。それは、「サウス・バウンド・サウレス」と「オール・マイ・ラヴ」のコンポーザーにジミー・ペイジの名前がないように、ジョン・ポール・ジョーンズ主導のアルバムだからということがまずある。ロックンロール、サザンブギ、シャッフルビート、サンバ、ロカビリー、テクノ風ダンスナンバー、ラブバラード、スローブルースと、飽きさせないバリエーションは、まさにジョン・ポール・ジョーンズならではだ。渋谷陽一は確か「レッド・ツェッペリン世界の旅」と評していたっけ。

しかし何と言っても『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』の異色さは、そのジャケット・デザインだ。レッド・ツェッペリンは3枚ごとに変形ジャケットを出しているが、この『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』は白眉だろう。ジャケット・デザインはかのヒプノシス。ツェッペリンのメンバーもいろいろとアイディアを出しているようだ。「Led Zeppelin In Through The Out Door Revisited」のサイトと、『写楽』81年4月号(小学館)の特集を参考にまとめてみる。

イン・スルー・ジ・アウト・ドア』のジャケットは6種類あり、茶色い紙袋から出すまでどのジャケットかわからない仕組みだった。まずはそのジャケット一覧を(マウスを乗せると説明が見られます。画像のズレはご勘弁を)。

A表:刑事風の男の視点 B表:金髪女の視点 C表:バーテンの視点 D表:黒人女の視点 E表:ピアノ弾きの視点 F表:赤毛の娼婦の視点
A裏:黒人女の視点 B裏:ピアノ弾きの視点 C裏:赤毛の娼婦の視点 D裏:刑事風の男の視点 E裏:金髪女の視点 F裏:バーテンの視点

このジャケットは、中心に帽子をかぶった謎の男がいて、表は謎の男が火をつけた後の光景で一部カラーになっている。裏は謎の男が火をつけようとしている光景で、こちらは全面セピア色だ。つまり、裏から表へと時間は進行している。その舞台は、アメリカ南部の場末のパブといった風情。

そして、その謎の男を取り囲む6人がパブにいる。それは、バーテン、金髪の女、刑事風の男、赤毛の娼婦、ピアノ弾き、黒人の女だ。ジャケットはAからFの6種類だが、この6人の視点で写真は構成されており、いずれも表に写っている人物の視点が裏のジャケットになり、裏に写っている人物の視点が表のジャケットになっている。具体的に言うと、Aの表は刑事風の男の視点、Aの裏は黒人女の視点、Bの表は金髪女の視点、Bの裏はピアノ弾きの視点、Cの表はバーテンの視点、Cの裏は赤毛の娼婦の視点、Dの表は黒人女の視点、Dの裏は刑事風の男の視点、Eの表はピアノ弾きの視点、Eの裏は金髪女の視点、Fの表は赤毛の娼婦の視点、Fの裏はバーテンの視点である。つまり、ADがセット、BEがセット、CFがセットになっているわけだ。そしてAからFを順に見ていくと、刑事風の男→金髪女→バーテン・・・と、時計回りに視点がパブを一周していることに気づく。

結局のところ、1枚のジャケットからすべては見えない。ワシが買ったのはFだったが、そこには刑事風の男、ピアノ弾き、黒人の女の姿がない。6人全員がわかるB-Eのセットだったとしても、今度は紙を燃やしているディテールがぼけてしまう。ネオンサインの「Fully Coots(完全にバカども)」が、ワシらの愚かな視野を象徴しているのかもしれない。ワシらが認識しているのは、所詮は世界の6分の1でしかないのだ。

Led Zeppelin出口から入ることほど難しいことはなさそうだ」というコメントが、『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』にはあったという。一つの視点に縛られずに、出口から入って新たな視点を獲得したならば、きっとまた別のものが見えてくるに違いない。

最後に、灰皿のイラストがついた『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』の内ジャケットは、水を垂らすと色が出てくる仕掛けがあったようだが、水でぐちゃぐちゃになるのが怖くて、結局試すことなく終わってしまった。どんな色が出たのだろうか。。。

 Led Zeppelin : Kashmir
 Led Zeppelin : Ten Years Gone
 Led Zeppelin : Achilles Last Stand
 Led Zeppelin : Nobody Fault But Mine
 Led Zeppelin : In the Evening
 Led Zeppelin : Hot Dog

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レッド・ツェッペリン
レッド・ツェッペリン / イン・スルー・ジ・アウト・ドア
レッド・ツェッペリン / マザーシップ(DVD付き)
レッド・ツェッペリン / DVD


posted by 上村龍司 at 19:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ハードロック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする